ジェンダーステレオタイプが機会損失を生むAndrii Yalanskyi / Shutterstock.com
世界の企業が男女格差解消に向けて動く中、日本企業はいまだ「周回遅れ」と指摘される。単純な数字の比較では測れない“真の格差”の改善のため、企業がなすべきことは何か。本稿では『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。格差温存により生じるデメリットや、変革のための知見、手法について解説する。
雇い主のジェンダーステレオタイプが組織の配置にもたらす弊害とは何か。また、性別によるバイアスは男女のキャリア形成にどのような影響を与えているかを分析する。
ジェンダーステレオタイプが引き起こす性別職域分離
『男女賃金格差の経済学』(日本経済新聞出版)
ジェンダーステレオタイプは、様々な経路をたどって男女賃金格差を引き起こす。
まずは、STEM分野を女性が避けることで、安定した雇用や高給が保証されやすいエンジニア職や研究職の女性比率が下がる。ジェンダーステレオタイプは、配属や異動配置においても、男性に適した職場、女性に適した職場という固定観念をつくりだす。
その結果、例えば、法人営業や生産技術は男性が多く、総務やマーケティングやカスタマーサービスは女性が多いといった性別職域分離が生じる。もちろん、第1章で議論したように、長時間労働を要求される職場に時間的な制約のある女性を配置しにくいという理由から性別職域分離が生じている面もある。また、応募する側の労働者のジェンダーステレオタイプもあり、女性の応募がなく採用できないというケースも多い。しかし、まずは採用や配置を行う雇い主側のジェンダーステレオタイプが主要な原因となって、女性を採用あるいは配置するための十分な取組みを行っていないケースが多い。
図表1は、ある製造業企業A社の職場ごとの女性比率の推移を見たものである。
■図表1 A社の職場別女性比率の推移







