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世界の企業が男女格差解消に向けて動く中、日本企業はいまだ「周回遅れ」と指摘される。単純な数字の比較では測れない“真の格差”の改善のため、企業がなすべきことは何か。本稿では『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。格差温存により生じるデメリットや、変革のための知見、手法について解説する。
なぜ、部下の成長機会には男女差が生じてしまうのか。社内の育成投資や異動配置における、ジェンダーバイアスの影響の見極め方のいくつかを紹介する。
育成投資に男女差が生じていないか
『男女賃金格差の経済学』(日本経済新聞出版)
成長につながる数少ない機会を部下に与える時、多くの管理職は同程度の能力を持つ男性と女性の部下のうち、男性の方を選んで配置する傾向がある。無意識にそう選択してしまう管理職もいる一方、「女性の方が辞める確率が高いから」と意識的に選択している管理職もいる。これが、ジェンダーバイアスであり、統計的差別だ。
また男性の上司は、女性の部下に対して過保護になる傾向があるのかもしれない。厳しい状況に置かれると辞めてしまうのではないかと、手堅く成功できる機会を与えることは、一見配慮しているようで、実は成長機会を奪っていることになる。このようなことが積み重なると、男女間で成長機会に大きな格差がついてしまう。この傾向が生じていないかを確認するための、2つの代表的方法を紹介する。
最も簡単に確認できる可能性があるのが、目標管理制度の記録だ。日本の大企業の多くが導入していて、年度の初めに上司と面談を行って目標を設定し、年度の終わりにその達成度合いを評価している。その際、男性と女性で難易度に違いが出てくるかもしれない。
会社によっては、目標の難易度を上司に評価させている場合がある。難易度スコアであったり、難易度の高い目標をチャレンジ目標としてフラグをつけていたりする場合など、様々なケースがある。
そこで平均難易度とかチャレンジ目標数といった指標を使って、男性と女性で比較するとよい。目標そのものの難易度を評価していない場合でも、役割等級制度を導入している企業では、役割等級ごとに目標の難易度が設定されるので、職位ごとに役割等級の男女差をみてもよいだろう。






