写真提供:DPA/共同通信イメージズ

 従来とは大きく異なる競争環境で組織が生き残るためには、周囲の変化のスピードを上回る速さで自ら変革を成し遂げられる「自走式」になる必要がある。そして、この自走式組織へと変化を促すために求められているのが、「共感型リーダー」だ。本連載では、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による『共感型リーダー まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法』(岩田松雄著/KADOKAWA)から、内容の一部を抜粋・再編集し、組織を自走させるためのリーダーシップについて紹介する。

 今回は、さまざまな著名企業でも採り入れられている、自走式の組織に最適な2つの新しいリーダーシップのスタイルについて解説する。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年7月2日)※内容は掲載当時のもの

■ シェアード・リーダーシップ(SL)

 シェアード・リーダーシップ(Shared Leadership:SL)とは、パートナーシップ・リーダーシップをより広くメンバーに当てはめて、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有している組織の状態です。SLは、近年ビジネス業界で注目されている考え方で、環境が変化しやすい時代においては、複数人がリーダーシップを発揮し、多様な考え方や価値観に基づいて業務を行うことが有効とされています。

 SLを取り入れると、チーム全体のモチベーションが向上するだけでなく、プロジェクトを円滑に進行させることができ、チーム全体のパフォーマンスを高めることができます。

 またチームメンバー一人ひとりが「組織のミッションを自分のことと考え」ており、グループ内の知識の融合が積極的に行われ、リーダーシップを取ることで、高い成果が得られます。これからはリーダーは一人ひとりのメンバーに「自分のビジョンは何か」「自分は何をしたいのか」を語らせることが大切です。

 SLの特徴や利点には以下のようなものがあります。

・柔軟性
状況やタスクに応じて最も適切なリーダーが選ばれるため、チームは迅速に対応することができる。 

・エンゲージメント
チームメンバー全員がリーダーシップの一部を担当するため、メンバーの参加意識やモチベーションが高まることが期待される。

・専門知識の活用
メンバーがそれぞれの専門分野でリーダーとしての役割を果たすことで、チーム全体の知識やスキルが最大限に活用される。

・リスク分散
一人のリーダーがミスをすると、その影響は大きくなることがありますが、リーダーシップを分散することで、リスクも分散されることが期待される。

 ただし、SLを効果的に適用するには、質の高い明確なコミュニケーションやメンバー間の信頼が必要です。また、各メンバーがリーダーシップを取ることに慣れていない場合、最初は混乱や摩擦が生じることも考えられます。