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 デジタル化が進化し続ける中、独自の価値によって顧客とつながり、収益を上げていくマーケティング戦略が、業種を問わず多くの企業に求められている。こうした動きに呼応し、戦略の土台としてマーケティングフレームワークを導入する企業も増えているが、自社の競争力として活用しきれないケースも少なくない。

 本稿では『マーケティングフレームワークの功罪 成果を生む戦略策定のための独自プロセス獲得法』(菅恭一著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。フレームワークを成果に結びつけるために必要な思考法や実践プロセスについて、成功企業の事例を元に考える。空調大手ダイキン工業のブランドマネジメントとは?

28年の実務で結実させたシンプル思考
ダイキン工業株式会社「実務家ブランド論」

 ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)は、住宅用から業務用まで幅広くプロダクトを世の中に提供し、空調業界のグローバルリーディングカンパニーとして成長を続けています。

 この成長を支えるブランドメッセージが「空気で答えを出す会社」です。ダイキンは現在、このブランドメッセージを軸として、日本国内にとどまらずグローバルで一貫性のあるブランドコミュニケーションを展開できる理想的な状態にあります。

 しかし、ここにたどり着くまでの道のりは、試行錯誤の連続だったようです。

■ 古典をベースに実務での扱いやすさを追求

 長年、ダイキンのブランドコミュニケーションをけん引してきた、同社総務部広告宣伝グループ長の片山義丈氏は、28年間にわたる試行錯誤の末にたどり着いた一つの結論として、著書『実務家ブランド論』(宣伝会議)の中で、守破離の「破」に当たる、独自のフレームワークを提唱されています。

「実務家ブランド論」におけるフレームワークの特徴は、古典として権威のあるアーカー氏のブランド論や、ケラー教授のブランド・レゾナンス・ピラミッドの考え方をベースとしながらも、実務で扱いやすいように思考をシンプル化したことです。そこには3つの特徴があります。