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 ロケットや人工衛星と聞くと、多くのビジネスパーソンは「自分の仕事や日常とは遠い世界の話」と考えるかもしれない。しかし実際には農業、漁業、鉱業、金融、災害対策、地図、通信など、現代社会ではあらゆる産業に宇宙技術が活用され、人々の暮らしを支えている。本稿では『宇宙ビジネス』(中村友弥著/クロスメディア・パブリッシング)から内容の一部を抜粋・再編集、壮大な宇宙空間が生み出すビジネスの可能性を探る。

 宇宙空間の利用において避けて通れない「宇宙ゴミ」問題。除去やリサイクル事業を新たなビジネスチャンスと捉え、技術開発が進む国内外の最新トレンドとは?

宇宙ゴミを除去するための技術開発

宇宙ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 現在、実際に存在する宇宙ゴミを除去できた事例は存在しませんが、除去できる一歩手前まできています。その実証を行った企業こそ、アストロスケールです。アストロスケールは、2021年にデブリ除去技術実証衛星を打ち上げ、衛星から模擬デブリを分離したのち、捕獲する実証に成功しました。

 また、2024年には非協力物体とも言われる、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られない宇宙ゴミのひとつであるロケットの上段に近づき、その周りをぐるっと一周するという世界初の偉業に成功しました。

 このミッションには続きがあり、周回観測を行ったことで、捕獲したいと想定していた場所が捕獲できる状態であることの確認も行っています。さらにはデブリから約15mの距離まで接近することにも成功しています。次のミッションでは、実際に宇宙ゴミの除去を行うこととなっています。

 宇宙ゴミは、秒速7〜8km(時速にすると2万5000km超)というものすごいスピードで飛んでいます。高速道路で時速100kmで走っている車に近づき、その周囲をぐるりと回りながら撮影することや15mという距離まで接近することがどれほど難しいかをイメージいただけるとよいかもしれません。

 当たり前ですが、人工衛星がその場にあることを肉眼で見ることはできません。物理計算によってそのようなアクロバティックな実証を成功させています。