
ロケットや人工衛星と聞くと、多くのビジネスパーソンは「自分の仕事や日常とは遠い世界の話」と考えるかもしれない。しかし実際には農業、漁業、鉱業、金融、災害対策、地図、通信など、現代社会ではあらゆる産業に宇宙技術が活用され、人々の暮らしを支えている。本稿では『宇宙ビジネス』(中村友弥著/クロスメディア・パブリッシング)から内容の一部を抜粋・再編集、壮大な宇宙空間が生み出すビジネスの可能性を探る。
イーロン・マスク率いるスペースXが先陣を切った「通信衛星コンステレーション」。刺激を受けた各国の企業が続々と参入を計画している。次世代通信はどう変わるのか?
イーロン・マスク氏が仕掛ける「スターリンク」のすごさ

スターリンクのサービスを活用すれば、これまでインターネットを使えなかった地域であっても、通信速度が高速で、低遅延のインターネットを、大規模な設備も必要なく利用することができます。
例えば、通信速度は現状のスペックで上りが最大25Mbps、下りが最大220Mbpsと動画サービスを楽しむうえでは十分なインターネット環境を提供できるレベルを実現しています。また、遅延についてもスターリンクの公式HPによれば約25ミリ秒となっており、従来の通信衛星と比較するととても短い遅延です。
また、人ひとりが持ち運べるほどのコンパクトなアンテナを設置さえすれば、インターネットを利用できるようになっています。そのため、これまで通信環境が十分でなかった地域にあった法人での利用はもちろんのこと、個人でもお金さえ払えば利用が可能となっています。
さらに、利用料も自宅に設置する場合は日本では月額6600円からと、高額すぎるとは思われないだろう設定がされています。
スターリンクのサービスは2020年からβ版のサービス提供が始まり、日本では2022年にサービス提供が開始されました。現時点で120カ国以上が利用できるようになっており、その契約者は2025年1月時点で460万人を超えています。仮に月額6600円の契約だったとしても、年間の売上は3000億円以上となります。