
江崎グリコといえば、ランニングパンツ姿の青年が両手を上げる「ゴールインマーク」が有名だ。もちろん、企業名をあしらったロゴもある。それぞれの変遷をたどると、「継承」と「刷新」という、商標デザインの対照的な在り方が見えてくる。基本形はそのままのゴールインマークと、時代ごとに変わりゆく企業ロゴは、企業の不易と流行を感じさせるものだ。江崎グリコ「江崎記念館」館長の大野信二氏と社史グループの石橋達二氏に、その2つの歴史について聞いた。
創業の精神を受け継ぐゴールインマーク
ゴールインマークは、江崎グリコ創業者の江崎利一が創立2年前の1914(大正3)年に自ら作ったものだ。
薬種業を営んでいた利一は、カキの煮汁にグリコーゲンが含まれていることを発見し、キャラメルにそのエキスを入れた「栄養菓子を国民に広めようと一念発起する。
新しい菓子を印象付けるため、商品名に「キャラメル」を入れず「グリコ」とし、基調色として当時競合他社の多くがキャラメルのパッケージに使っていた「黄色」を避け、目を引き食欲をそそる「赤」を選ぶ。そして、佐賀県の実家近くの八坂神社で、かけっこをする子どもが両手を上げて「ゴールイン」する姿を見て、「マークとして、これほどピッタリのものはない」とひらめいた。
子どもたちに、象、ペンギン、鳩、花などの候補も見せて、「どれが好きか」、さらに1週間後「どれを一番覚えているか」と聞き、圧倒的支持を得て定めたのがゴールインマークだった。同社ミュージアム「江崎記念館」館長の大野信二氏は、「ここに利一のグリコ事業のスタート地点がある」と話す。