本田技研工業 執行職 デジタル統括部長の河合 泰郎氏(撮影:榊水麗)

 本田技研工業(ホンダ)が全社的なDXを「第二の創業」と位置付け、2024年に新たな「DXビジョン」を策定した。ビジネスモデル変革のスピードと事業効率の両立を図り、データとAIを軸に組織文化の刷新を進める。100年に一度の変革期に、同社は何を変え、どう次の成長を描くのか。執行職 デジタル統括部長の河合泰郎氏に聞いた。

「データを真ん中に置く」ことで創出する3つの価値

――ホンダが2024年に策定した「DXビジョン」では「ビジネスモデル変革のスピード」と「事業効率」の向上の2つの柱を掲げています。河合さんがデジタル統括部長に就任してから、この2点において最も重要視してきた課題は何ですか。

河合泰郎氏(以下、敬称略) 自動車業界は「100年に一度の変革期」にあり、これをホンダでは「第二の創業期」と捉えています。ビジネスモデルも製品も、あらゆるものが大変革を迎える中で、これからはスピードがより重要になります。しかし、今までのやり方を改善するという発想だけでは、新しいものを生み出すまでに時間がかかってしまう。これが1つ目の課題です。

 一方で、ホンダには第一の創業期から続けてきた既存事業があり、これも成長させ続けなければなりません。しかし、既存事業に100%のエネルギーを使っていては新しいことができない。既存事業をいかに効率化するか。そして、そこで生まれたキャパシティーを、いかにスピード感を持って新しい事業の創出に振り向けるか。この「効率」と「スピード」が大きな課題であり、DX戦略を推進するための2つの車輪になります。