彼は、「会社が研究開発向けの測定器メーカーであるため、常に新しい動向、トレンドをウォッチする必要がある。社長室という壁を作っていると、社員はノックという行為をしなければ会えなくなる。自分は社員とも社外のエンジニアとも常にディスカッションしたいから壁を作りたくない」と語った。日本のように秘書室で社長にアポを予約するとなるともう一段階の壁を作ることになり、社員からますます遠ざかってしまう。
■ 大手との出会いの場を提供する
政府・経済産業省は企業への資金提供よりも、メーカーとユーザーとの出会いの場を作ることにもっと積極的になるべきではないだろうか。例えば、日本には東京の大田区や大阪の東大阪のように機械加工のモノづくりに必要なツールや部品を制作する中小企業がある。実は海外には、そのような支援産業はほとんどない。
しかし、一方で日本の中小企業には海外大手との出会いの場がない。
10年以上前に英国に取材した際、英国の経産省に相当する組織の下部団体が、大手との出会いの場を作るため、IT系中小企業やスタートアップのセミナーを開催した会場に行ったことがある。
そこで筆者のようなメディア関係者も現地のPR会社と知り合いになった。その会社の人が来日するときにはこちらで懇談の場を作り、現地の様子をうかがった。地方自治体とも協力し、地方都市を回るロードショーを展開し、企業の知名度を上げていく、その手伝いや支援金を国や自治体が提供するのだ。