15歳からプロミュージシャンとして活動し、バークリー音楽院でJAZZを学んだ後、外資系コンサルファームでパートナーを歴任したキャリアを持つ松永エリック・匡史氏。異色のバックグラウンドから生まれた独自の思考によって、ビジネスの世界で活躍してきた。現在は大学教授も務める同氏が、これまでの仕事を振り返りイノベーションにつながる思考法をまとめたのが著書『直感・共感・官能のアーティスト思考』だ。同氏が提唱する、先行きが不透明な時代に必要な「アーティスト思考」とは何なのだろうか。(前編/全2回)
■【前編】一人称の感性がイノベーションの源に 松永エリック・匡史氏が語る「アーティスト思考」が今こそ力を発揮する理由(今回)
■【後編】欧米型の成果主義がイノベーションを阻害している?松永エリック・匡史氏が唱える日本企業に必要な「過去への回帰」
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「非連続的」なアイデアを生む、MBA的思考とは異なる思考の衝撃
――『直感・共感・官能のアーティスト思考』を上梓するに至ったきっかけは何だったのでしょうか。
松永エリック・匡史氏(以下敬称略) 今から10年ほど前、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が世に出始めた頃、大手コンサルティング会社がデザイン会社を買収する動きが相次ぎました。アクセンチュアによるフィヨルドの買収(2013年)、マッキンゼーによるLUNARの買収(2015年)がその一例です。
当時、私はコンサルティングの仕事を通じて、これらのデザイン会社のトップと直接話したり一緒に仕事をしたりする機会がありました。その過程で気づいたのが、彼らの発想は非連続的であるということ。多くが美大出身である彼らは、突拍子もないアイデアをいきなりポーンと出してくる。クリエイティブな発想でビッグピクチャーを描くその「デザイン思考」に共感しました。私自身が、音楽大学で学んだプロミュージシャンであったことが大きな要因だったと思います。
かつてのコンサルティング業界においては、過去の事例を基にロジックを積み上げてストーリーを構築する、連続的・直線的なMBA的思考を使って考えるのが一般的でした。実は、MBA的なアプローチにずっと違和感を感じていましたが、DXによる急激な変化を通じてMBA的思考とは一見して異なる思考に触れたことで、私は、コンサルティングの主流が、非連続的な発想をもたらすデザイン思考へと移ったことを痛感したのです。