堀江:役員の方がメンタリングを行うことが難しいと感じられる会社さんもありますが、役員の方から拒否するような反応はなかったでしょうか。

坪井:特にありませんでした。冒頭のお話しにもありましたが、役員は常に現場のメンバーと対話する事が多いので、自分たちなりに実践しています。メンタリングを受けた方から、視座が高まって勉強になったという意見も来ているようで、とても嬉しいです。

■ 専門性と多様性を融合させるキャリアコース変革で、より強い人財組織へ

堀江:「女性活躍推進長期計画2030」では、多様な人材確保と成長を実感できる環境の整備、仕事と生活の両立の実現、経営職の働きがい変革、意思決定層への女性登用の4項目を重点課題に挙げられていますね。現在13.6%である女性経営職比率と現在20%である女性役員比率をそれぞれ30%にすることを掲げられてもいます。現状、達成は見えていますか。

坪井:2030年の30%については、まだ頑張らなくてはならないと思っています。ただ、24年には15%はいけるのではないかと思っています。ですから、取り組みとしてはもう一段あるかと思いますが、キャリア採用も続けておりますので、マインドセットや制度を整えることで増えていくだろうと思います。そのために働き方だけではなく、働きやすさということを主眼に置いて、さまざまな制度を整えています。

堀江:ありがとうございます。もう一段頑張らねばとおっしゃっているものの、プール人材の育成もしっかりと行っているからこそ、達成に向けての方向性は見えているということなのですね。素晴らしいです。

 また女性だけではなく、全体のキャリアコースやキャリア意識の向上も重要なポイントかと思います。キャリア自律を促すために、キャリアコースについてなども工夫をされているのでしょうか。

坪井:2024年春から一部、新卒者をコース採用に変えていきます。ジョブ型に寄りすぎてしまうと、キャリアアップを行う際には転職してしまう可能性があります。また専門性を高めすぎると狭くなってしまうということも有ります。

 その為、自分のアンカーとしてのコースを決めながら、その要素を広げていきながら多様な経験もできるようにしていくような取り組みです。例えば私は、マーケのあと広報を行って、人事も行ってきました。私のアンカーはマーケティング。それは相手のインサイトに答えるバリューを創るという意味では、広報も人事も同じだと思っています。

 キャリア開発というと、専門性が先か、多様性が先か、という話になりがちですが、専門性と多様性を切り離さないことが重要だと考えています。社会で通用する強みとして専門性の軸を持ちながら、経営環境の変化に対応できる多様な視点を持った人財を育成することが主眼です。

<連載ラインアップ>
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第2回 日本IBM社長山口明夫氏に聞く マネジャーはなぜ社員評価で「前任者との比較」をしないのか
第3回 日本IBM社長山口明夫氏に聞く 女性活躍推進にとどまらない、新しい働き方の追求とは?
第4回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 被災しても工場は撤退せず、同社が進めるCSV経営とは?
第5回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 女性経営職人材が約3倍に増えた「早回しキャリア」とは?
■第6回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く なぜ役員1人が社員10人のメンターを務めるのか?(本稿)
■第7回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 「なりキリンママ・パパ」で試した誰かが抜けても回る仕組みとは(9月26日公開)

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