「中国のEC業界の今」を知る象徴的なイベントとして「独身の日(11月11日)セール」と「618商戦」(「独身の日」セールに並ぶ巨大なセールでEC2番手の京東が主導)がよく知られている。
本連載ではこれまで「変容しつつある中国の『618商戦』」や「静かに幕を閉じた『独身の日』キャンペーン」、「『独身の日』セールから見えた日系企業が中国で狙うべき次なる市場とは」といった情報発信をしてきたが、それは「日本の読者に、両イベントから見えてきた中国の消費市場や消費者の嗜好の変化を伝えるため」だ。
さて、2024年の「618商戦」の状況だが、消費低迷でコロナ禍以降の低調なモードが続き、静かに終わった。今年は各社が先行販売をやめ、セール期間の拡大を図ったにもかかわらず、GMV(流通取引総額)が初めて減少。商品カテゴリー別の販売状況も生活必需品や健康関連が好調な一方、化粧品関連の大幅な減少という明暗が分かれる結果となった。
節約志向の影響を受け、流通取引総額は7.0%減
アリババや京東などECの主要プレイヤーが2022年の独身の日セールからGMVや注文回数など詳細な販売状況を公開しないようにしたため、ECセールのデータは第三者の調査会社である「星図データ」の公開データをベースに分析したい。
それによれば、2024年の「618商戦」期間中※1のGMVは7428億元で、前年の同期間※2の7987億元から7.0%減となった。
※1 Tモール:5月20日~6月18日まで、京東:5月31日~6月18日まで、その他:各社が商戦をスタートさせた日から6月18日まで
※2 各社とも5月31日~6月18日まで
ECの種類別にGMVをみると、アリババをはじめとする総合型ECが前年から減少したのとは対照的に、「抖音」(TikTokの中国版)や「快手」などの動画アプリによるライブコマースは増加している(下の図。なお、重複があるため、種類別のGMV合算金額はGMVの全体数値である7428億元とは一致していない)。
ここで注目したいのは即時リテールである。
これは「消費者がオンラインで注文すると、リアル店舗がその注文に応じて商品を準備し、それをプラットフォーマーが即時配達を行う方式」で、ここ数年、オンラインとオフラインの融合が図れるモデルとして成長している。
しかも、多くのプレイヤーは即時(30分から1時間程度)の中でより素早い配達を目指そうと、分刻みでの時間短縮に取り組んでおり、それがサービスの向上と良い口コミの獲得につながっている。