ワールドカップカタール大会が開幕した。日本はドイツに逆転で勝利したが、コスタリカに敗れ、次はスペイン戦となっている。こうした中、中国のメディアはカタールにある中国の要素、中国が建設したスタジアムや中国が生産した関連グッズ、中国のEVバスなどを必死にアピールし、外交部(外務省)の華春瑩報道官もツイッターにてアピールしている(なお、ネット上では「カタールには中国チーム以外の中国要素は確かに豊富だ」と、中国サッカーの弱さがやゆされている。コロナ感染者が急拡大し、地方政府の異なる対応による混乱が収まらない中、ワールドカップは唯一、誰でも気軽にコメントできる対象になっているのかもしれない)。
一方では、ワールドカップほどではないが、11月といえば、米国のブラックフライデーや中国の「独身の日」(11月11日)セールも注目されるイベントだ。しかし、今年の「独身の日」キャンペーンは例年より静かに幕を閉じた。本稿ではそこから見えた、中国における消費とリテールの変化を考察したい。
流通取引総額が公表されなかった
中国では10月31日の夜8時からEC最大のバーゲンセールである「独身の日」キャンペーンが始まった。開始から1時間が経過したところで、EC最大手アリババのTモールに出店している102のブランドの売上高が1億元を超えたという。
例年よりキャンペーン期間が短くなった今年は、アリババをはじめとするプラットフォーマー各社が依然としてライブコマースに注力し、集客と販促を図ろうとしていた。その結果、3億人超の消費者はアリババのECサイト「淘宝(タオバオ)」のライブコマースを視聴し、多くのチャンネルが1億元(約20億円)以上の売上高を記録した。
なお、最終的に、各社はキャンペーン期間中のGMV(流通取引総額)を公表しなかった。2009年にスタートした「独身の日」セールにして初めてのことだ。アリババは「コロナ禍で経済情勢が厳しい中、2021年と同程度の水準」とのコメントを出している。
そしてキャンペーン当日の11日に中国の衛生当局が防疫政策に関する「新防疫20条」という緩和措置を発表し、話題を呼んだ。当然かもしれないが、キャンペーンよりコロナ対策に対する関心がずいぶん高いわけだ。
こうして何だか寂しい気持ちだが、例年では大いなる盛り上がりを見せる「独身の日」キャンペーンが静かに終わった。