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 自社の繁栄だけでなく、経済の循環を通じて日本経済全体に発展をもたらす「企業価値の最大化」は、今や現代企業の使命とも言える。

 本連載では、『企業価値最大化経営』(澤 拓磨 著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集し、企業価値の最大化を実現するために必要な「構想力」「実行力」をいかにして向上させるか、事例を交えながら多方面から検証する。

 第4回は、時価総額100億円から1000億円を目指す企業が取り組むべき3つの課題を解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 企業価値最大化経営のキードライバー、「CEO」と「M&A」が果たすべき役割とは?
第2回 世界最古の企業・金剛組ほか、超・長期にわたり繁栄する組織の「3つの共通点」とは?
第3回 M&A後の企業価値最大化を目指す上で行うべき「3つの施策」と「失敗パターン」とは?
■第4回 時価総額100億円から1000億円を実現するための「事業ポートフォリオ」「組織」「リーダーシップ」戦略とは?(本稿)
第5回 創業100年企業の企業価値最大化の成否を握る、「次の100年ビジョン」とは?

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【CEOアジェンダ1】時価総額100億円から1000億円を実現するための事業ポートフォリオ戦略

企業価値最大化経営』(日本経済新聞出版)

 留意すべきポイントは3つだ。

 1つ目は、事業ビジョンである。時価総額100億円から1000億円を目指す企業においても事業ポートフォリオを組成する際は、全社企業価値最大化だけではなく事業ビジョンの実現も目標とすべきだ。

 それが結果的に、グループシナジー創出、コングロマリット・プレミアム創出を生み、全社企業価値最大化を実現する事業ポートフォリオを創造する主要な因果となるだろう。

 なお、時価総額100億円から1000億円を目指す企業においても事業ビジョンの検討プロセスは不変だ。すなわち、過去・現在・未来の時間軸における外部環境(政治、経済、社会、技術等で構成)の変遷を見極め、外部環境の変遷より発見した世界課題(需要)と自社のコア・コンピタンスおよび価値創造ストーリーを鑑み、自社が解決すべき課題と事業展望(課題解決の進め方)、実現可能性を検討していくのである。

 2つ目は、既存事業ポートフォリオの評価・方針・優先順位付けである。時価総額100億円から1000億円を目指す企業はあくまで目標を企業価値最大化に置いているため、FCFや利益創出力、成長性等を持つ事業領域であれば事業ビジョンから大きく外れない限り、多角化を許容していく。

 FCFや利益創出力、成長性等は企業戦略・競争戦略の観点から戦略を導出し、定量的にスプレッドシートに「見える化」することで判断可能だ。そして、各事業のフルポテンシャルとなる理論企業価値を算定し、各事業の評価、方針(成長投資、維持・自立、リストラクチャリング[分割・統合等]、縮小、再生、売却、撤退・清算・新規投資等)、優先順位を決めていくのである。

 3つ目は、既存(コア)事業と新規事業の成長戦略である。既存事業ポートフォリオの評価・方針・優先順位付けを経て選抜された既存(コア)事業の成長戦略は、オーガニック戦略、インオーガニック戦略の2つの観点から検討していく。

 オーガニック戦略の検討は各事業が属する業界の現在・未来の競争環境を競争エリアごとに今一度見極めることが出発点だ。

 得られた客観的な環境認識のもとFCFや利益(売上向上・コスト削減)、成長性の創出を企図し、各事業の純顧客価値(顧客価値[製品の機能的価値向上に向けた製品改良等]ー顧客コスト[価格調整等]の純価値向上)、バリューチェーン、業務プロセス(オペレーション効率の改善等)を最適化していく。