自社の繁栄だけでなく、経済の循環を通じて日本経済全体に発展をもたらす「企業価値の最大化」は、今や現代企業の使命とも言える。
本連載では、『企業価値最大化経営』(澤 拓磨 著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集し、企業価値の最大化を実現するために必要な「構想力」「実行力」をいかにして向上させるか、事例を交えながら多方面から検証する。
第3回は、企業価値を最大化する過程で行うべき3つの施策について、M&A当事者の視点から解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 企業価値最大化経営のキードライバー、「CEO」と「M&A」が果たすべき役割とは?
■第2回 世界最古の企業・金剛組ほか、超・長期にわたり繁栄する組織の「3つの共通点」とは?
■第3回 M&A後の企業価値最大化を目指す上で行うべき「3つの施策」と「失敗パターン」とは?(本稿)
■第4回 時価総額100億円から1000億円を実現するための「事業ポートフォリオ」「組織」「リーダーシップ」戦略とは?
■第5回 創業100年企業の企業価値最大化の成否を握る、「次の100年ビジョン」とは?
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【主要論点1】 結果の客観的評価と原因分析
3~5年にわたる中期経営計画の実行期間を終えた後、結果と原因を評価・分析し、経営の流れと未来への教訓を読み解き、企業価値最大化経営に再挑戦する際の課題を明らかにする。
ただし、M&A当事者視点の企業価値最大化経営では、同業他社・ベンチマーク企業との相対比較は主眼とせず、前計画との比較に基づく客観的評価を主眼とする。
結果の評価は、計画においてCEOが決断した目標企業価値の実現率は何%だったか定量的に比較していく。結果を評価する際、あくまで事実に基づき可能な限り同条件で定量的に比較することに努め、そこに感情や恣意性が入り込む余地はない。
原因の分析は、結果の評価で得られた前計画の実現率との彼我の差(原因)を明らかにすべく、外部環境・内部環境を対象とし厳格に行う(外部環境に関する原因分析・内部環境に関する原因分析ともに、CEO視点の企業価値最大化経営と分析の方法論に変わりはない)。
そして、NO.1を目指し、より高い・より早い・より堅い・より長い企業価値最大化経営に再挑戦していくのだ。
【主要論点2】 引き継ぎ対象選定とベストオーナーのリストアップ
結果の客観的評価と原因分析を経て企業価値最大化経営に再挑戦する際の課題を明らかにした後、ベストオーナーの引き継ぎ対象となる企業や事業の選定とベストオーナーのリストアップを行う。
引き継ぎ対象となる企業や事業の選定は3つの観点で検討していく。
1つ目は、各企業や事業の前計画への貢献度と未来の企業価値最大化経営における定量的・定性的貢献可能性の確認である。
特に、各企業や事業が未来において既存(コア)事業と考えられるかノンコア事業と考えられるかについて慎重な検討が必要だ。
2つ目は、経営資源の再配分方針である。
当該企業や事業をベストオーナーへ引き継ぐことで得た人的資本・財務資本等の経営資源を新たにどのように配分していくかを決める。既存(コア)事業とノンコア事業の検討が適切に行われていれば自ずと選択肢は絞られているはずだ。
3つ目は、ステークホルダーへのコミュニケーション方法である。
企業を取り巻くステークホルダー全般を対象に検討していくこととなるが、特に引き継ぎ対象となる企業や事業の組織構成員へのコミュニケーション方法を慎重に決める。
引き継ぎ対象企業や事業のリーダーとなるキーマンへは個別に、その他組織構成員には全社的に(状況次第では個別の場合もあり)、背景と目的・引き継ぎ後の処遇等を丁寧に伝え、引き継ぎ後の展望を伝えていくのだ。