三菱倉庫 代表取締役 常務執行役員の前川昌範氏(撮影:酒井俊春)

 140年近い歴史を持つ三菱倉庫が、ここに来て大胆な人事施策を推し進めている。未来のあるべき人材ポートフォリオを明確化し、その実現に向けて企業内大学の設置や新たな採用方式の導入などに乗り出した。前編では、人材ポートフォリオの策定までを詳しく取り上げた。後編の本記事では、引き続き人事トップである三菱倉庫 代表取締役 常務執行役員の前川昌範氏に、ポートフォリオ達成に向けた具体的な取り組みを聞いていく。(後編/全2回)

どうやって「変化を恐れず新しいことに挑む人材」を増やすか

――三菱倉庫では未来の人材ポートフォリオを策定した上で、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

前川 昌範/三菱倉庫株式会社 代表取締役常務執行役員総務部長兼広報室長

1986年東北大学経済学部経済学科卒業、三菱倉庫株式会社入社。倉庫現場、営業、労働組合専従書記長や日本倉庫協会幹事職を経験したうえで総務・法務系の業務で株主総会運営等にも関わり、総務・広報・人事部長を兼務した。2023年4月(取締役は6月末から)から現職。

前川昌範氏(以下敬称略) 当社が掲げている命題は、新たなビジネスモデルや収益源の創出です(前編を参照)。策定した人材ポートフォリオにも、それらのアイデアを生み出す人材を社内に増やしたいという考えが込められています。各人事施策はポートフォリオを実現するためのものですから、分かりやすく言えば変化を恐れず、新しいことにチャレンジする人材を生み出す施策を考えています。

 一例として、3年前から人材採用の選考プロセスに「創造力」を測るテストを導入しました。応募者を評価する上での重点項目としています。

 その他、既存の従業員に対しては、「イノベーションプログラム」という、ビジネスアイデアを社内公募する企画を開始しました。これまでに40以上の応募があり、いくつかの案には予算をつけて、一定期間にわたり研究・開発を進めてもらいました。これらの成果発表会を後日行い、結果が優秀なものについては、当社のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)である「MLCベンチャーズ」の投資委員会にかけて事業化を目指すことも想定しています。

 これ以外にも、従来より多くの人材が海外研修に行けるよう研修制度を変更したり、子会社を若手の登竜門のような位置付けにしたりして、チャレンジできる機会を増やしています。社内の評価制度も再構築しており、従業員の挑戦を評価できる形に移行していきます。

 ただし、評価の軸を「目標に対する達成度合い」に置くと、確実に評価を得るために、あえて達成しやすい小さな目標を立てるケースが増える危惧があります。そこで達成度に重きを置くのではなく、チャレンジングな目標を立て、その目標と真剣に向き合った従業員を評価できる制度を作ろうと考えています。