2024年4月に始まる時間外労働の上限規制や改善基準告示の改正により起こる「物流2024年問題」。いまや物流・運送業だけでなく、荷主企業・消費者が一丸となって取り組むべき社会問題となっている。働き方改革関連法の適用猶予期間の終了まで残り半年を切った今、向き合うべき課題とは。
トナミ運輸で取締役上席執行役員 経営企画室長を務める太平雄吾氏 、多くの運送企業を支援している瀬戸労務管理事務所の瀬戸晃氏、規程業務効率化サービスを提供するKiteRaの古川浩司氏が、「物流2024年問題」がもたらす課題や、その対応策などについて実例を交えて語った。
物流の「2024年問題」がもたらす課題
KiteRaがトラックドライバー600名に対して行った、「トラックドライバーに聞く、物流の2024年問題に関する実態調査」。これによると、2024年問題について「知らない」「よくわからない」と回答したトラックドライバーが3割を超えていたという。「勤務先で2024年問題について、何かしら研修や説明があったか?」という問いに対しては、「何も行われていない」という回答が7割を超えており、3割のトラックドライバーが2024年問題を知らないという状況もうなずける。
では、労働時間の実態はどうなっているのだろうか。同調査によると、1割弱のトラックドライバーが時間外労働の上限規制を超えていることが明らかになった。つまり、このまま労働時間が変わらなければ、1割弱のトラックドライバーが上限規制に抵触する可能性がある。
また、「上限規制によって心配すること」については、約7割のトラックドライバーが「収入の減少」を懸念していることが分かった。KiteRaの古川浩司氏は、「トラックドライバーは、かつてはとても稼げる職業でしたが、1990年の規制緩和以降それが難しくなりました。さらに今回の上限規制も加わったことにより、多くの人が収入の減少を懸念しているという状況が、調査結果にも表れています」と話す。
その結果として、約2割のトラックドライバーが副業や退職を検討していることも分かった。
「やはり収入減が避けられないとなると、収入を増やすために副業するか、他業界への転職を検討する人は出てきます。2割程度ではありますが、それでもトラックドライバー不足の問題に対し、結構な影響を与えるだろうと感じられる調査結果です」(古川氏)
副業を検討するトラックドライバーが今後増える可能性がある一方で、懸念されるのが就業規則に対する意識だ。同調査の「勤務先の就業規則を見たことがありますか?」という問いに対して、「就業規則を見たことがない」という回答が6割を超えた。古川氏は、「先ほど労働時間の上限規制に1割弱ぐらい抵触する可能性があると話しましたが、それだけではなく、就業規則を知らないがゆえに規則に反して副業をする人も出てくる可能性があると思っています」と懸念する。
これらの調査結果から分かるのは、今後、事業者サイドは、トラックドライバーの退職や他業界への流出を防ぐために、賃金を持続的に上げていきながら、自社の利益率向上も目指さねばならないということだ。