資生堂ジャパン エグゼクティブオフィサーCDO兼EC事業部長 資生堂インタラクティブビューティー取締役DX本部長の笹間靖彦氏(撮影:宮崎訓幸)

 モバイル肌診断、バーチャルメイク、DNA検査・・・化粧品販売大手の資生堂ジャパン(以下、資生堂)が、顧客の一人ひとりの肌を分析するサービスの開発に取り組んでいる。同社CDOの笹間靖彦氏は「人口減少で日本市場が縮小する中、当社は科学的に肌にフォーカスすることで顧客の支持を獲得していく」と意気込む。

 こうしたサービス開発に必要となるのが、これまでオフライン・オンラインに点在していた顧客データの統合と活用だ。資生堂は店舗やブランドでそれぞれ独立していた会員プログラムのデータを統合。「Beauty Key」というアプリに集約させている。

 資生堂が打ち出す新サービスとマーケティング戦略について笹間氏に聞いた。

「肌」にこだわる理由

――資生堂はなぜ「肌」にフォーカスしたサービスを展開しているのでしょう。

笹間 靖彦/資生堂ジャパン エグゼクティブオフィサーCDO兼EC事業部長 資生堂インタラクティブビューティー取締役DX本部長

1988年資生堂入社。 セールス・マーケティングなどの業務を経験後、デジタルビジネス開発部長、経営サポート部長、 プレステージブランド事業本部事業戦略推進部長、デジタル戦略部長などを経て、2023年1月より現職。
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好きな言葉:「一隅を照らす」
注目している企業:ファーストリテイリング

笹間靖彦氏(以下敬称略) 当社は創業した約150年前から、肌の美しさにこだわった化粧品を販売してきた歴史があり、現在も最大の強みだからです。肌の質を維持・向上するための研究はもちろん、現在はDNA検査をもとに一人ひとりのお客様に本当に合った商品・ブランドをお勧めできる知見も貯まっています。

 元々、化粧品に対する考え方は文化圏によって大きく異なります。欧州はフレグランス(香り)、北米はビフォーアフターの変化が楽しめるメイクアップ(化粧)が主流。相対的に分析すると、日本人は肌の状態を最も気にする人が多いのです。

 ただしメーカーにとって難しいのは、お客様は科学的に肌の状態が向上すれば良いと考えるのではなく、「このファンデーションを使った時に、自分の肌が良くなったような気がする」といった感情的な部分も押さえておく必要がある点です。こうした感情に訴求するためには、スキンケア商品の品質の他にも、買い物体験・接客といったサービスの内容も非常に重要になってきます。

 私たちとしては、商品の品質はもちろん、商品の提供方法も含めて、お客様一人ひとりの肌質・生活スタイルに「ぴったり合う」体験を届けていく必要があります。そこで第一段階として始めたのが、これまで店舗やブランドごとに分かれていた会員情報を自社アプリ「Beauty Key」に集約することです。このアプリ上で、顧客データの収集・分析・活用を実践しています。