立命館大学大学院経営管理研究科 教授 山本真司氏

 マネージャーになった以上は、部下に能力を発揮してもらい、チームとして成果を上げていきたい。そう思いながらも、実際は自らがプレイヤーとして働き、結果的に業務を抱えすぎて身動きが取れなくなってしまっているリーダーも多いのではないだろうか。『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』を著した立命館大学大学院経営管理研究科 教授の山本真司氏は「チームメンバーが自発的に動いて成果を出せる組織にするには、仕組みが必要」と語る。前編となる本記事では、同氏が提唱する「脱・頑張り」のための仕組みづくりについて紹介する。

■【前編】組織を成長させるカギ、今こそリーダーに必要な「脱・頑張り」マネジメント術(今回)
【後編】生まれ変わった「史上最凶の指揮官」、部下から言われた一番嬉しい言葉とは

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X世代とZ世代の間にある決定的な「価値観の差」

――最新著書では「忙しすぎるリーダー」に向けて、組織が自発的に成長するための「仕組み」を紹介されています。そもそも、リーダーが頑張っているのに組織が成長しない原因はどこにあるのでしょうか。

山本真司氏(以下、敬称略) 昨今、かつてない世代間ギャップが生じており、それが組織に大きな齟齬を生み出しています。その結果として、日本企業の従業員の「組織エンゲージメント」が著しく低くなっていること、それが組織の成長を阻む原因です。

山本真司/ 立命館大学大学院経営管理研究科 (立命館大学ビジネススクール)教授

慶應義塾大学経済学部卒業、1987年シカゴ大学、シカゴ・ブース・スクール修了(MBA with Honors)、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー、アジア戦略グループ代表、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン東京事務所代表パートナーを歴任。約30年にわたる企業戦略コンサルティング経験。2012年まで早稲田大学スポーツ科学大学院客員教授、2011~21年経営管理研究科客員教授。2022年より現職。

 組織で働く人は、大きく3つの世代に分類できます。58歳から43歳くらいまでを指す「X世代」と、42歳から27歳くらいまでの「Y世代」、そして26歳以下の「Z世代」です。この3世代のジェネレーションギャップはかつてないほど広がっています。

 例えば、「社員は会社のために滅私奉公して働くべき」というX世代の価値観と、ウェルビーイングを重視するZ世代の価値観では、仕事に対する意識に大きな違いが見られます。

 また、デジタル化の進展によって、以前はポストが高い人にしか入ってこなかった重要な情報を、小さなコストで誰もが入手できるようになりました。多くの情報は上から与えられるものではなく、横のつながりから得られるものに変わり、Z世代は「フラットな関係性」を重視するようになっています。

 加えて、グローバリゼーションによって、文化的背景が異なる多国籍人材の仲間が入ってくるようになりました。そんな彼らに対して、トップダウンで従わせようとしても、やる気を出してもらうことは難しいものです。

 イノベーションが求められる時代背景についても、見逃せません。部下が自ら動いてクリエイティビティを発揮し、イノベーションを起こせる組織に変わるためには、これまでの「トップダウン型の組織」ではなく「フラット型の組織」をつくっていく必要があるのです。

 本書では、そのために必要な仕組みを様々な視点からご紹介しています。