捨てられる木から生まれた新しいビジネスの可能性

 山翠舎では古民家を解体して古木を買い取り、その後の施工に生かすビジネスを展開しています。広さや建物の状態、周辺の環境などにもよりますが、古民家の取り壊しには通常、300万〜500万円程度がかかると言われます。

 ところが山翠舎では、古木をこちらが買い取ることを前提に、一般よりはるかに安い金額で解体を引き受けています。

 状態の良い古民家なら無料で解体するケースもあります。

 山翠舎では長野県大町市に、敷地面積2300坪、建設面積800坪ある古木専用の倉庫・工場を設置しています。この倉庫には、常時5000本以上の5000本以上の古木がストックされていて、全国各地からの注文に応えています。

 山翠舎では飲食店やギャラリー、コワーキングスペース、公共施設など、古民家の古木を使った改装をこれまでに500店舗以上手がけています。

 特に好評なのが飲食店です。古木の風合いを生かした店づくりを行うことで、来店者に心地良い空間を提供しています。

 飲食店オーナーと常に一緒に店づくりをしてきた私たちは、飲食店の経営が決して容易ではないことを知っています。消費者の好みや流行の変化によって、売り上げが急激に落ち込むこともあります。特に新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからは、多くの飲食店が苦しい状況に追い込まれ店舗を閉鎖しました。

 日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業パネル調査(第4コーホート)」によると、2016年に「飲食店・宿泊業」で開業した企業のうち、2020年末時点で14.7%が廃業してしまいました。この調査では、日本政策金融公庫から融資を受けられた、信用力の高い企業が対象とされているため、一般的な飲食店の廃業率はこれよりもっと高いと見る人もいます。飲食業界では、「3年で70%、10年で90%の飲食店が廃業する」とも言われています。

 これに対し、2008年以降に山翠舎が古木を使って施工を手がけた飲食店の廃業率は14%。一般的な廃業率を大きく下回ります。

 なぜ、古木を使った飲食店の廃業率が低いのでしょうか。私は、「古木が醸し出す雰囲気の良さ」が最大の理由だと考えています。

 老舗の飲食店には、伝統が生み出す独特の雰囲気があります。年季が入って少しくすんだ壁や柱、使い込まれて光沢が出てきたカウンター……。それらがなんとも言えない居心地の良さを感じさせます。通常、こういった雰囲気が生まれるまでには、数十年の年月が必要です。

 しかし、内装デザインの一部に古木を取り入れることによって、開店時から「老舗感」を演出することができます。雰囲気の良さが来店客を引き付け、それで飲食店の店舗継続率を高める。放置され、朽ちていくのを待つだけだった古民家が宝の山に変わる。これこそサステナブルな新しいビジネスのであると私は信じています。

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