実は、日本における仏壇は1300年以上前、天武天皇が「諸國家毎に佛舎(ほとけのみや)を作り、即ち佛像と経とを置きて礼拝供養せよ」と発布したのが始まりとされています。

 当初は貴族など一部の人だけを祀っていましたが、江戸時代になると、庶民の家にも仏壇が置かれるようになりました。

 以来、仏壇は日本人にとって、先祖を偲び家族の心を一つにする、大事な存在として生活に溶け込んでいます。私の家でも、実家暮らしだった幼少期は毎日仏壇に手を合わせていました。そんな習慣が愛着のわく理由の一つでもあるのかもしれません。

 現に古民家の処理を検討している人の中で、仏壇の問題に悩んでいる人は決して少なくありません。家自体は取り壊してもいいが、仏壇だけはな
んとか残したい。そうしなければ、ご先祖様に申し訳が立たないと考えるのです。

 ある古民家を山翠舎が借り上げ、そば屋に転用しようとした案件がありました。その家の持ち主は、「家中のどんな箇所も好きなように改装していいが、仏壇のある部屋だけはそのままにしてほしい」と仰っていたのです。

 そこで持ち主に提案したのが、想い出お預かりサービスです。

 不便な場所にあって商業施設としては使いづらい古民家を山翠舎で借り上げ、そこに複数の持ち主から預かった仏壇を置くことで、仏壇をそのまま維持します。

 仏壇と思い出の品を預かる。こうすれば持ち主が望むときに、仏壇のある古民家を訪れてお参りすることができます。

 古民家の持ち主とのやり取りは、相手の気持ちに沿って丁寧に行うべきもの。古民家が「潜在的空き家」になっているということは何かネックになっているものがあるということです。それを取り除いてあげることも大切な仕事であり、そこに私はとてもやりがいを感じています。