現在の日本では、空き家の数が加速度的に増えており、古民家も例外ではありません。その空き家となっている古民家を解体から古木を収集・備蓄・整備し、単なる販売に止まらず設計・施工までも手掛けることで注目されている企業が長野県にある「山翠舎」。最近では長野県小諸市に日本各地の窯元より選りすぐった食器や花器、北欧を始め世界の雑貨やヴィンテージ家具など提案するセレクトショップ「酢重ギャラリーダークアイズ小諸」も手がけた。同社の挑戦を書籍『‶捨てるもの″からビジネスをつくる』より紹介する。

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古民家再生で地域活性化を目指す、山翠舎の挑戦 第1回「地方発・古民家再利用ビジネスに学ぶ、サステナブルな循環型ビジネスのヒント

(*)本稿は『‶捨てるもの″からビジネスをつくる』(山上浩明著、あさ出版)から一部を抜粋・再編集したものです。

深刻さを増す「放置古民家」問題

 総務省の「住宅・土地統計調査」によると、2018年における日本全体の空き家数は846万戸でした。これに対し、野村総合研究所は2033年の空き家数が2100万戸まで増えると予測しています。少子高齢化と人口減少が進む日本では、空き家の増加に歯止めがかからない状態です。

 地方では、問題はより深刻です。少し前の調査になりますが、総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、都道府県別に見た空き家率ワースト3は山梨県(空き家率21.3%)で、次いで和歌山県(20.3%)、長野県(19.5%)でした。

 ちなみにベスト3は埼玉県(10.2%)、沖縄県(10.2%)、東京都(10.6%)となっています。

 空き家を放置しておくことには、たくさんのリスクがあります。雑草が伸び放題になり、ドアやガラス窓が壊れたままの家は、治安や景観など近隣に多大な迷惑をかけることでしょう。不法侵入者や動物などが居つくと、犯罪や事故、放火といった思わぬトラブルを引き起こす危険性も高まります。

 しかし、空き家を放置する人の側にも事情があります。規模にもよりますが、空き家を解体するためには300万〜500万円前後の費用がかかります(建坪60坪相当の古民家の場合)。また、住宅を解体して更地にしてしまうと、固定資産税が一気に6倍にまで跳ね上がるケースがあります。つまり、経済的な理由から、古民家をそのまま放置してしまうケースが多いのです。

 こうして、空き家となっている古民家の数は徐々に増えています。

 日本政策投資銀行の「古民家の活用に伴う経済的価値創出がもたらす地域活性化」によれば、日本における古民家の空き家数は21万戸。おそらく、2033年には50万戸を超えることでしょう。

 ここまでお伝えしてきたように、古民家や古木には大きな価値があります。それは、地方にとって、潜在的な資産と言えるものです。それらを空き家のまま放置せず、有効活用することは、地方活性化に大いに役立つはずです。