背景に中国リスク
一方でアップルのiPhoneはその95%の生産を中国本土の工場に依存している。22年には中国政府の厳格な「ゼロコロナ」政策の下、同国内の工場が数度にわたり一時閉鎖され、サプライチェーン(供給網)が混乱した。鴻海の中国・鄭州工場では22年10月下旬から約1カ月にわたり、新型コロナの感染拡大に端を発する騒動が起き、稼働率が低下した。
また、その間には、中国と鴻海が本社を構える台湾の地政学的な緊張が高まったとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。こうした中、アップルは取引先に対し、中国本土からの生産移管を促している。
中国依存から脱却
アップルは自社製品の製造拠点を多様化したい考えで、インドはベトナムと並んで有力な生産移管先とみている。
アップルは17年に台湾EMS大手の緯創資通(ウィストロン)と提携しインドでiPhoneの生産を始めた。その後、鴻海もインド政府の国内生産推進計画に応じて同国での生産を開始した。
現在鴻海は、チェンナイ近郊のスリペルブデュールに持つ工場でiPhone 14シリーズを製造している。
ただ、それでもインドでの生産拡大はアップルや鴻海などの企業が中国から離れることを意味するものではないと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
これらの企業が過去数十年にわたって構築してきたサプライチェーンインフラは、他の国に簡単に取って代わられることはない。加えて、中国には多くの労働力と豊富な経験がある。これらが製造分野における中国の大きな強みだという。