SUBARU専務執行役員CIO IT戦略本部長 兼 経営企画本部副本部長の臺卓治氏(左)と、IT戦略本部デジタルイノベーション推進部の小川秀樹氏

デジタルツールやデータ分析はあくまで手段

 水平対向エンジンによる低重心の安定性、4輪駆動技術による高い走破性から得られる安心感、運転支援システムの「アイサイト」を搭載した安全性──。自動車メーカーのSUBARUは、同業他社とは一線を画す独自の世界観を築き、そこに魅せられた熱心なファンの多くは “スバリスト”とも称されている。そんなコアユーザーとの結び付きを大事にしたクルマづくりを続けてきた。

「販売車種の数や販売台数からいって、われわれは中規模メーカーですので、当然、選択と集中が必要。コンパクトカーから高級車までの全方位でなく、当社が強みを発揮できるマーケットに絞ることが、ある種の差別化になっているのです。また私自身、入社時から常に、SUBARUらしさとは何かを自問自答してきました」

 こう語るのは、同社の専務執行役員CIOで、IT戦略本部長兼経営企画本部副本部長を務める臺(だい)卓治氏。臺氏は4代目の「フォレスター」で開発責任者を務めたほか、商品企画本部長も歴任するなど開発畑が長く、年次改良やマイナーチェンジを含めれば、SUBARUが擁するほとんどの車種の開発に何らかの形で関わってきたという。

 同氏がCIOに就いたのは3年前の2019年のこと。自動車業界は近年、年を追うごとにCASE(クルマのコネクト化、自動運転化、シェア化、電動化)への対応負荷が高くなり、電気自動車(EV)時代到来のうねりの中で、従来とは異なる非連続の戦略に舵を切ることも多くなった。

 EVに関しては今年5月、トヨタ自動車との共同開発による初のEV、「ソルテラ」の販売を開始しているが、CASEへの対応で当然、臺氏が担う領域の重みも増している。