損保ジャパン:自動車メーカーとシステム会社との過失割合を判定

 2022年2月、損保ジャパンは自動運転システム開発会社ティアフォー(愛知県名古屋市)との資本提携(2019年7月)の成果を踏まえて、レベル4の自動運転の商用化を見据えて「ドライバーを必要としない自動運転向けの保険」を開発した。

 過去に米ウーバーや米テスラが起こした自動運転車の事故を振り返ってみよう。生身のドライバーではなく、システムがクルマを走らせると設計ミスや予期せぬ誤作動が事故原因となるケースが多い。事故原因を特定するためには、システムを搭載したクルマの動きを正確に記録し、詳細に分析と検証を進める必要が出てくる。

 損保ジャパンが開発した保険の特徴は、クルマのメーカーとシステムを開発したソフト会社(ティアフォー)との過失の割合を第三者である損保ジャパンが判定する点だ。

 事故解決のスピードアップを図ることが、保険契約した事業者や個人のドライバーに安心感を提供するだけでなく、システムやクルマの速やかな改善(設計の見直し、誤作動防止)と事故防止にもつながる。

 一方、ティアフォーは台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)のEV事業に、この保険付き自動運転システムを提供することで合意したと伝えられている。

 鴻海はEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器受託生産)の世界最大手であり、グローバルで影響力のある自動車メーカーからEV(電気自動車)の受託生産を依頼される可能性が高い。

台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は独自開発したEVをベースに外観や機能を顧客企業の要望に合わせてカスタマイズ、受託生産する予定だ(https://www.foxconn.com/en-us/

 鴻海(ホンハイ)のEV事業が軌道に乗り、ティアフォーのシステムが世界中に輸出されれば、自動車保険については現地の保険会社と保険契約を結んだ上で、損保ジャパンがその保険会社と再保険契約を締結、「再保険料」という形での収益を得られる商流が見えてくる。

 自動運転の普及とともに、事故のリスクが大幅に低下したり、クルマのサブスクリプションビジネスが浸透したりすれば、保険の契約件数は減少し、保険会社には大きなダメージになる。日本国内市場という垣根を超えて、技術力を武器にグローバルで稼ごうという損保ジャパンの戦略には大いに合理性がある。

 保険の対象がドライバー(人為的ミス)からシステム・クルマ(設計ミス・誤作動)へ移行することで、保険はドライバーが価格や補償条件を基準に任意に選択するものではなく、自動運転のシステム・クルマに必然的に組み込まれる存在になっていく。