フィンランドの自動運転車“GACHA”

 連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第16回。デジタル・トランスフォーメーション(DX)やビッグデータ、AI、スマートコントラクトが大きな変革をもたらし得る分野の1つに保険が挙げられる。金融などのイノベーションに深く関わってきた元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が解説する。

 デジタル技術、とりわけビッグデータやAI(人工知能)、スマートコントラクト(契約の自動化)が大きな変革をもたらし得る分野として「保険」が挙げられます。これは、保険がデータベースに基づく「大数の法則」(より多くのサンプルを集めるほど理論値に近づくという法則)を通じて、人間が生きていく上で避けがたい不確実性に対処しているからです。

保険の本質的な問題とは

 人間が生きていく上で「不確実性」は避けられません。そもそも、人間は自分がいつまで生きるのかもわかりませんし、災害の発生も完全には予測できません。もちろん、未来の出来事を全て予見できてしまうと、生きる喜びや潤いもなくなってしまうでしょうから、不確実性はこの世界と不可分とも言えます。したがって、不確実性を無くすのではなく、力を合わせて不確実性を乗り越えていくことが求められます。

 そのために重要な手段となってきたのが「保険」です。自分の家が将来火災に見舞われるかどうかはわからなくても、家のサンプルを100万軒集めれば、そのうち年間何軒くらいが火災に見舞われるか、ある程度正確に予測できるようになります。そこで、これらの家から予め保険料を集めておき、これを原資に火災に見舞われた家の損害を補填する保険のスキームが機能し得るわけです。