しかし、保険は本質的な課題も抱えています。

 1つ目は「逆選択」です。これは、保険が事前に想定していた母集団の属性が、保険の存在そのものによって事後的に変わってしまうという問題です。例えば、標準的な人々を想定して医療保険を提供したところ、健康な人々は保険に入らず、病弱な人々がこぞって保険に入るといった場合が考えられます。

 もう1つは「モラルハザード」です。これは、保険が事前に想定していた行動が、保険の存在そのものによって事後的に変わってしまうという問題です。例えば、標準的な人々を想定して盗難保険を提供したところ、保険に加入した人々は加入前よりも盗難防止に気を配らなくなるといった場合が考えられます。

 これらの問題は長い間、「保険の根源的な問題であり、解決は難しい」と捉えられてきました。しかし、デジタル技術の発達により、これらの問題に対処できる可能性が生まれています。

ビッグデータ、AI、スマートコントラクト

 まず、ビッグデータを集め、AIなども用いながら詳細に分析することで、従来よりも詳細な属性を明確にした母集団を構成できるかもしれません。医療保険であれば、保険契約者のデータを集めて詳細に分析すれば、その人がどういう病気にどの程度かかりやすいのか、また、健康維持にどの程度気を配る性格かなどを分析し、これを保険の設計や保険料に反映させられる可能性が広がっています。これにより、逆選択の問題に対応できる余地も大きくなります。