E2Eデータドリブン経営では、まずはベースレジストリの再構築を行う。これは、NEC全領域のデータアーキテクチャを企業のベースレジストリとしてリデザインし、One Dataのプラットフォームとするもの。財務データは既に一元化しているが、これに非財務データも統合し、E2EデータのAIによる解析も実施。これにより、データの持つ価値を最大に引き上げ、経営基盤の高度化と経営・マネジメントの成長促進を実現する。
コーポレート機能のリデザインでは、コーポレート機能の再分類、ビジネスパートナー機能の構築、貢献利益制度の導入によるコーポレートガバナンスの再構築に取り組んでおり、各必要分野での組織と人の改革は完了しているという。「今後は、さらに重要なデータの統制を強化するために、これまでの機能別、プロセスごとの標準化から、CX部門がデータのマスターオーナーとして、機能別プロセスに対し、横断的な立場でデータの統制を行っていくよう進めています」(一森氏)
Smart Work 2.0では、NECが30年来進めてきた、人事制度やITの仕組みを柔軟に組み合わせた働き方改革を一層加速させてきた。その結果、社員アンケートで「スマートな働き方を実践している」という回答が2018年度の22%から2020年度は64%へ、「業務へ率化」についても19%から41%へと、社員の働き方満足度が大幅に向上した。また、COVID-19感染拡大に伴い、リモートとリアルを組み合わせたハイブリッドワークが広がり、2022年4月時点でテレワーク率は70%弱、1日当たりのWeb会議は3.7万回となっている。ている。
「これまでの取り組みによって、『働きやすさ』の環境が整ってきました。次のステップとして、働きがいの向上に取り組んでいます。NECで働くことで自己実現ができる、働きがいを持って働けるといった内発的動機を喚起し、信頼を元に挑戦して自己も会社も成長しようというビジョンを掲げています」(一森氏)。目指すのは、自分自身の成功体験が誇りになっていくサイクルサーキュレーションを実践することで、社員自身が働き方を実感できること。こうしたことの実現には、ウェルビーイングとセキュリティが重要であり、この2つを軸としてデザインしていく。
また、多様な人材が集まって価値を追求していく文化、ワークプレイスを使うことで、自らより良い働き方をデザインし自己成長していく。それをテクノロジーの力でサポートし、加速させていく考えだ。
ITシステムのモダナイゼーションとセキュリティを推進
次世代デジタル基盤改革は、ITの改革である。社内にあった基幹システムはクラウドに移行していき、最新の技術をすぐに使えるようにする。2019年にはNECグループのICTの目指すべき姿として「DX Agenda」を策定し、それを引き継ぐ形でIT中期計画を策定。DXの重要な軸とするとともに、新たな体系化を実施した。
モダナイゼーションでは、2021年5月に基幹システムをSAPのS4 HANAに移行し、AWS上に構築したことを皮切りに、基幹システム以外の個別システム、事業に特化した生産システム、人事領域、経理領域の一部などもモダナイゼーションを進めていく計画だ。これにより、現在は約800あるシステムを2025年までに30%削減、TCO(総保有コスト)は13%削減することを目指している。
セキュリティについては、ゼロトラストに向けて刷新していく。これはクラウド化やマルチデバイス、ロケーションフリーといった環境の変化やサイバー攻撃の高度化に伴い、従来の対策では脅威への対応が困難になってきているからだ。さらにセキュリティを確保しつつ、利便性も向上できるよう、全ての関係者の意識変革を含めた柔軟な対応を行っていく。
ガバナンスについても、海外を含めるとセキュリティやデータの使い方といった面でまだまだ標準化されていないところがあるため、真のグローバルカンパニーを目指す上でも、この対応は重視している。ITの運用・保守要員中心だった人材をIT戦略要員の育成に注力し、割合も40%に引き上げる計画だ。
IT資産も、クラウドシフトしていくことで身軽にしていく。その取り組みも、戦略協業パートナーと一緒に推進していき、エコシステムの仕組みや社員自身の使いやすさにも結び付けていく。グローバルに向けた取り組みを大きく進めていくこと、また現在進めている約230のプロジェクトを完了させていくことが急務となっている。「ITは経営そのものと考えていますので、これを組織や社員文化につなげていくことで経営をけん引していく仕組みになると思います」(一森氏)
グローバルパートナーと戦略的な協業関係を築き、ITインフラのモダナイゼーションの領域でAWS、データドリブン経営の領域でSAP、エクスペリエンスの領域でServiceNow、働き方改革の領域でマイクロソフトとの連携を強化している。こうして社内で培ってきた事例からノウハウや知見を集約・リファレンス化し、お客さま自身がDXを推進していく際の先行事例として活用してもらうことで貢献していく。さらに、そのフィードバックをソリューションに反映し、社内の事例にもつなげていくという、好循環を目指す。

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