また、アップルはライブ配信などの技術を採用しており、米カリフォルニア州クパチーノの本社スタッフが、工場の製造現場で起きていることをリモートで追跡できるようにしている。タブレット端末「iPad」を利用して現地と連絡を取り合っているほか、AR(拡張現実)技術を使い、本社の技術者が工場内の問題を把握できるようにしているという。
中国人スタッフ拡充の動き、意思決定も
アップル製品の最終組み立て業務は、EMS大手の台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)や台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)などが手がけている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップル製品の大半はこの2社が中国各地に持つ工場で生産している。
Nikkei Asia(日経アジア)などによると、アップルの主要サプライヤー(取引先)200社のうち、半数が上海市とその近郊に工場を持つ。だが、これら中国東部地域では1カ月以上にわたり、ロックダウンなどの厳しい制限下に置かれている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国政府の措置によりアップルのサプライチェーン(供給網)は今も混乱が続くと報じている。
中国政府はビザの発給を制限している。入国時は数週間、政府施設内で隔離措置を受ける必要がある。これにより多くの企業が、出張や駐在を目的とする社員の中国渡航を躊躇するようになったという。
在中国米国商工会議所が22年5月9日に公表した調査では、企業の74%が中国のゼロコロナ政策が、熟練スタッフのつなぎ留めや採用に悪影響を及ぼしていると回答した。3分の1の企業は、上級幹部や重要な人材が中国の任務を辞退したと回答した。
こうした中、中国で人材を拡充する動きが広がっている。在中国欧州連合(EU)商工会議所の調査によると、65%の企業が1年以内に中堅スタッフの、62%が1年以内にシニアスタッフの現地化計画を推進すると回答した。また、在中国ドイツ商工会議所によると、30%が中国子会社の意思決定機会が過去2年で増加したと回答している。
(参考・関連記事)「中国東部で都市封鎖、台湾企業が相次ぎ生産停止 | JDIR」