【土木工事現場のDX】完全無人化施工を目指す

 土木工事現場でもDXを実践している。デジタル化コンセプト「Shimz Smart Site Civil」は「ものづくりをデジタルで」を土木工事現場で実現するデジタル化コンセプトである。

 2023年度内の現場実装を目指して開発中のブルドーザーの自律施工システムは、AIによる環境認識機能・自律制御機能を備えた建機側の自律ドーザーシステムと、施工管理や安全管理のモニタリング等を担う施工管理システムを核に構成される予定。自律ドーザーシステムは後付けが可能なデバイスであり、他社が開発した自動化・自律化建機との連携も視野に入れながら、自動化・自律化した建機群による土木工事の完全無人化施工の実現を目指している。

 また、土木事業では最新の XR(VR〈仮想現実〉、AR〈拡張現実〉、MR〈複合現実〉)技術を活用し、サイバー・コンストラクションとフィジカル・コンストラクションの融合により実現する新たな建設システムを「Shimz XXR Vision」と呼び、環境整備を進めている。

【建物OS】 DX-Core(DXコア)をプラットフォーム化

 顧客に付加価値を提供する仕組みとして、建物OSのDX-Core(DXコア)を開発している。建物内の建築設備やIoT デバイス、各種アプリケーションの相互連携を容易にする建物運用デジタルプラットフォーム機能を備えた基本ソフトウエアで、ビル機能を容易にアップデートできる機能を提供。デジタルゼネコンへの展開のための「デジタルな空間・サービスを提供する」仕組みのコア機能である。

 DX-Coreは、各サブシステムとAPI接続、またはルール設定(ローコード技術)によるサブシステム間連携の機能を提供する。さらに、共通マップ基盤(平面図等への表示機能を1つのサブシステムと扱う機能)や、第三者 API 機能(事前に規定されたパターンを用いれば大規模な開発無しで比較的容易に接続できる機能)などの特徴を持つ。

 活用面では、建物内だけでなく、どのような施設・街区サービスにつなげていくのかが今後の重要な課題としている。

 全体構成としては、DX-Coreは建物側(オンプレミス)とクラウド側の2層の階層で構成される。クラウド側 DX-Coreは将来的に都市OSとの接続の機能も期待される。また、クラウド側 DX-Core自体を都市 OS に応用する可能性も考えられる、としている。

 このように、施設・街区サービスにつなげるために、既に都市OSとの接続も検討されている。

 以上のように清水建設は、デジタル化の進んだ未来を見通したビジョンを掲げ、DXを本業の建設事業(建物と土木)の発展につなげようとしている。トップが、さらに全社的に、デジタルの力を信じて積極的にDXを展開して、競争力のあるデジタルゼネコンに自己変革する姿勢を強く感じる。

※本ケーススタディは、清水建設がホームページ上で発表しているニュースリリースや中期デジタル戦略などの他に、清水建設研究報告 第99号(2021年12月)「小特集 -デジタル・ロボット技術-」の論文も参考にして執筆した。