清水建設は、建設業の中でただ1社「DX銘柄2021」に選定されるなど、DXへの取り組みが高く評価されている。特に、ビジョンとガバナンスの面の評価はかなり高く、トップがDXに積極的に取り組む姿勢が顕著にうかがえる。

 4月22日の日本経済新聞などへの新聞広告(全面広告)では、現在建設中の虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区の高層ビル(2023年竣工時点では日本で一番高いビルとなる)の写真を掲載し、「これまでにない高さを、これまでにない技術で。匠の技とデジタル技術のベストミックスで築いた330m」と、最新建設の現場でのデジタルの力を強調している。

 今回は、その清水建設のDXのビジョンづくり・推進方法、現在のデジタルゼネコンへの展開状況などを紹介したい。

【DXのビジョンづくり】目指すのは「デジタルゼネコン」

 清水建設の中期デジタル戦略2020『Shimzデジタルゼネコン』は、長期ビジョン(SHIMZ VISION 2030)をデジタルの観点から描き、そのイメージをバックキャストして、2023 年までに実現すべきイメージを定義したものだ。

 その中で、清水建設は目指すべき「デジタルゼネコン」の姿を、「リアルなものづくりの知恵と先端デジタル技術により、ものづくりをデジタルで行い、リアルな空間とデジタルな空間・サービスを提供する建設会社」と定義して、将来のビジョンを示している。また、実現のための3つの柱として、「ものづくりをデジタルで」「デジタルな空間・サービスを提供する」「ものづくりを支える業務をデジタルで」を示している。

 2021年7月には、これら3つの柱の着実な推進・実現に向け、それぞれのデジタル化コンセプトを策定している。

「ものづくりをデジタルで」:建築事業と土木事業の在り方に関して、プロジェクトの上流から下流の運用に至るまで一貫したデータ連携体制を構築し、デジタルなものづくりを目指す。

「デジタルな空間・サービスを提供する」:都市・建物デジタルツインの活用によるデジタルなサービスの提供を目指す。これにより、顧客の資産価値向上、運営管理効率化、利用者の利便性・安全・安心の向上に貢献。

「ものづくりを支える業務をデジタルで」:従業員がいつでもどこでも安全に業務を行うことができ、建築・土木のものづくりや空間・サービスのデジタル化をはじめとする全ての業務を支援するデジタル化基盤全体の在り方。

 このように、清水建設は、長期的なビジョンを掲げながら、多様な面でDXの着実な実現を目指している。