設計施工一貫方式を主体(設計施工比率は約7割)に、自ら手掛ける建築物を「作品」と呼ぶ建築専業の竹中工務店。建設を文化として後世に伝え継ぐとする「作品主義」と、「最良の作品を世に遺し社会に貢献する」という企業理念を貫き続ける同社は、創業から400年以上の長寿企業である(建築作品には「水天宮御造替」や「Panasonic Stadium Suita」などがある)。
その竹中工務店が今、DXに積極的に取り組んでいる。2021年3月に発表された「グループ成長戦略の実現に向けたICT戦略について」では、部門や企業の壁を超えたデジタル変革(DX)につなげようと、「デジタル化による業務の効率化」「デジタル化による事業の変革」「デジタルプラットフォームの構築」の3つのデジタル化施策に取り組んでいる。
BIM(Building Information Modeling)データのさまざまなプロセスでの活用、ロボットの高度利用、複数のプラットフォーム構築など、多彩なDX技術活用に取り組む竹中工務店。同社は非上場企業であるため、DX銘柄の対象にはなっていないが、DXへの取り組みでは高く評価すべき企業だ。
ここでは、竹中工務店の建設現場でのDX、ロボット活用、建物OS(ビルコム)、建設デジタルプラットフォームについて紹介をしたい。
【建設現場でのDX】プロセスイノベーションでも独自の取り組み
2024年4月から時間外労働時間の上限規制が建設業でも適用されるため、現場での効率化の取り組みは必須となっている。建設業界では、労働環境の改善が従来からの課題であったため、竹中工務店では、建設現場での業務の効率化と作業環境の改善のために、さまざまな面でデジタル技術を活用したDXを展開している。
まず、IoTの情報をもとに、複数の作業所における工事用機械の稼働状況を一元管理するクラウドシステムを開発して、保守運用業務を効率化した。また、ビーコンやGPSなどの位置認識と工事の情報を連携させた現場向けアプリ「位置プラス」シリーズも開発。建設現場で働く職員・作業員等の業務時間削減、生産性向上に貢献するアプリで、外販もしている。
ビル建設のためのタワークレーンを遠隔操縦するシステムの開発も行っている。2021年には、タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo(専用コックピットタイプ)」を用いて実際に建設資材を揚重した。その結果、従来のクレーン頂部に設置された運転席から操作する場合と同等の作業を行えることを確認。高所にある運転席への昇降が不要となることで、オペレーターの作業環境が大幅に改善し、運転席への昇降に要する時間(約30分)も削減され、生産性の向上につながった。
このように、竹中工務店は「作品」自体だけでなく、それを創り上げるためのプロセスイノベーションの面でも独自な取り組みをみせ、建設現場での業務の効率化や作業環境の改善につなげている。