業界全体がカスタマーファーストに移っていく流れを作る

――目指す世界観に向けた具体的な取り組みについて教えてください。新たに発売する、共創型自動車保険「&e(アンディー)」とはどのようなものですか。

桑原 「&e」は単なる自動車保険ではなく、IoTセンサーを活用した安全運転プログラムです。これは3つのレイヤーからなっていて、1つ目のレイヤーは、保険そのもの。CX(カスタマーエクスペリエンス)が高く、スマホで全てが完結できるようにコアがしっかりデジタル化されています。
万が一、事故が起きてしまった場合でもIoTセンサーが自動で衝撃を検知するので、ワンタップで事故の発生を連絡でき、詳細情報もすぐにサポートセンターに送られます。さらに検知した衝撃やGPSデータをもとに事故状況を動画で再現します。

 2つ目は、事故を起こさないための包括的プログラムで安全をつくり出すこと。IoTセンサーを活用し、安全運転診断のスコアリングやゲリラ豪雨などの危険情報アラートなどを行います。

 具体的には、この保険に入るとBluetoothが搭載された3.0センチ×3.0センチのIoTセンサーが送られてきて、それを自分の車の中に両面テープで張り付け、スマホと連動させます。それにより、自分の運転の癖のようなものが分かるようになります。

 安全運転を意識して良い運転ができたら、それがスコア化されてポイントが加算され、たまったポイントは交換できるといった楽しみも付加されています。

 そして3つ目が、もっと広い意味での安全、安心、事故のない世界を、他のさまざまな企業、自治体と一緒にデータを使って共創していくこと。運転中にApple Watchで取れる自分の生体情報をイーデザイン損保が分析することで、疲れが増してきたな、眠気が襲ってきたなというタイミングで振動、アラートを出して休憩を促すことで事故が起きないようにするなど、できるようになります。

 これらの実現のために、われわれはオープンでフレキシビリティの高いITプラットフォームをつくらなきゃいけないということから、フルクラウドで、マイクロサービスアーキテクチャで、APIでシステムを作り上げ、「&e」を実現させました。

――社会課題の解決に取り組んでいかれるわけですね。

桑原 特に地方は、免許返納といわれても車がないと移動できない、活動できないという課題があります。われわれとしては免許返納のタイミングをできる限り遅らせるために、若いうちから何ができるかと考え、例えば、脳の健康度をチェックするテストを受けて現状を自覚していただき、それに基づいて脳の健康動向をよくするアクションプログラムをやっていただくなどということを考えています。そのために、反射神経などに関して得意なメーカーとも一緒に取り組んでいきます。

 イーデザイン損保ではセンサーで把握した運転挙動のデータをもとに最適なアドバイスをして、特に反射神経が衰えないような形でご支援させていただく。すると免許返納が5年延長できるかもしれない。長く安全に自動車に乗り続けられるということをやろうとしているのです。

 Apple Watchとは、心拍数や睡眠データを運転データと掛け合わせて事故のない世界を作っていく。このようなことをやっていくのが「Safe Drive With」です。地方公共団体とも人流や運転とのデータとの掛け合わせをやろうとしています。

 こうした取り組みによって安全運転を意識する人が増えてくると全体として事故率は減ってくるはずです。減ったら減った分だけ、われわれも社会に貢献したいと思っていて、寄付という形の取り組みも行います。通常ならこれだけの額ですが、皆が頑張って事故が減ったので、この金額というように寄付として出させていただきます。その寄付の使い道も地方公共団体がアイデアを出し、プレゼンしていただくコンペ方式で選ばれたところにお渡しして実現していただく。その結果、事故がない世界により近づくということを目指します。

――「インシュアテック保険会社」として進化していく姿が見えてきました。これを実現することで、損害保険業界の中でどうなろうとしているのでしょう。

桑原 このように進化していくことで、保険業界全体が変わっていくというのが理想です。その中で、われわれがトップランナーとして走り、変革のトップランナーとして進んでいきたいと考えています。

 今の保険業界はまだまだ過渡期だと思うんですよね。お客さま本位のカスタマーファーストへの流れをわれわれの変革で加速していきたいと思っています。

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