システムを根こそぎ入れ替えて取り組む

――「インシュアテック保険会社」への移行は、いつからどのように進めたのでしょう。

桑原 2018年の秋から社内でメンバーを集めてワークショップを開きました。そこで、自分たちのありたい姿を考え、その実現にはどのようなことが必要かを話し合いました。その中で、次の課題が挙がってきました。それは今ある基幹システムのままでは機動性もないし、対応にコストがかかってしまう。このままだとオペレーションのほうに軸足が移ってしまい、お客さま対応を上げるほうに軸足が移せなくなるということ。そこで、システムを根こそぎ入れ替えましょうという流れになりました。

 保険の仕組みは複雑なので、保険会社では業務システム作りは極めて大切になります。ただ、その業務システムを供給者目線で作ってしまうと、お客さま目線にはならない。システムはここから作り直さないと、いけないんです。

――ワークショップでは、他にどのような課題が挙がったのでしょう。

桑原 自分たちの組織がすごく縦割りだということです。商品は商品、システムはシステム、カスタマーセンターはカスタマーセンターと、それぞれがしっかり責任をもってやる。ただ、横のつながりがあると思っていたけれども、それが弱いということが分かりました。お客さまから問い合わせを受けたときにどう応えるかというところで、横の連携が十分にはできていないことが浮き彫りになったのです。

 そして、お客さまが見る保険の画面も、お客さま目線ではなく、実は自分たちの目線でできていたりということも出てきて、これはやはり自分たちの在り方をもう一回定義したほうがいいという感想が、皆から出てきました。

――日本企業の共通課題ですね。それをどのように変えようとしたのですか。

桑原 まず、組織の壁を取り外すことが大切だと考え、各組織から人を一カ所に集めてチームをつくりました。そこでは、お客さま目線でカスタマージャーニーをしっかりとつくり、「一気通貫で考えると、こうだよね」などと、お客さまのことだけを考えて業務設計・システム設計しよう、お客さまが使うスマホアプリをつくろうとしてきました。これが、横の連携が強くなるきっかけとなりました。今は横串が強くて、逆に縦が邪魔になっているという話題が出るほどです。

――組織の形態も目に見える形で変えたのでしょうか。

桑原 CX推進部を立ち上げ、いろいろなところから人を集めました。この部署の取り組みはかなりのレベルまでいったんですが、ここから先はネットワーク型に近い組織で取り組んでいく必要があると思っています。プロジェクト単位で部署に関係なくチーム編成することを繰り返していき、1人の人間がいろいろなプロジェクトに関わっていく。それぞれのプロジェクトにはそこでの仕事を一番知っている人材をプロジェクトリーダーに据えます。縦のラインのマネジャーがプロジェクト全部の仕事を最も知っているわけではないわけですから。

 そして、評価の仕方も360度評価でやっていく必要があると考えています。本当は役職廃止が一番いいんですが、そこまではできないので、基本的にはプロジェクトリーダーたちを集めて、それぞれのパフォーマンスを測定して、それで査定する形にするのが一番いいと思っています。

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