データがあることで、根拠のある形で状況が見える化する

――インシュアテック保険会社では他企業との取り組みが重要になると思うのですが、どのように連携を進めていったのでしょうか。

桑原 コンセプトは、事故のない世界をお客さまと共創するということです。事故を減らすであったり、なくすということは自社だけではできません。他の企業と連携することで初めてできることです。

 事故を起こすとはどのようなことなのかというと、例えば、「ぼうっとしていた」という場合、なぜそうなったかというと寝不足だった、気圧の変化で頭が痛かった、反射神経が鈍っているなど、いろいろな原因があると思います。そこに切り込まない限り、本当に事故をなくせないので、気圧が変わって頭が痛いとなると片頭痛に関するノウハウを持つ企業と連携して、データを分析、掛け合わせるなどして、片頭痛に悩むお客さまにアドバイスすることをやっていけばいい。自分の車の前に割り込まれてイライラしたというのは、心拍数に表れるので、例えば、Apple Watchと連携するといったことが考えられます。

 ちゃんとしたパーパスがあれば、それに合う最適な企業が絶対に見つかるはずですし、そのパーパスに共感できれば、どんな企業でも一緒に協業していただけます。そうしたこともあって、他企業との連携はかなりできてきたかなと思います。

 自動車保険の事故のデータには、皆さん、すごく興味を持ってくださっています。机上のデータではなく、弊社が持っている実際のデータをうまく組み合わせることは彼らにとってもメリットなのでWin-Winの関係ができると思います。

――連携を進めた先にある、目指す世界観はどのようなものですか。

桑原 世界観でいうと、これまでの保険の常識を変えたい。事故が起きた後だけではなく、その前からお客さまをしっかりお守りすることがすごく大切だと思っています。事故という悲しい出来事に遭遇しないような形で、どれだけサポートできるか。そこにわれわれの神経を集中させてやっていきたいと思っています。

 データがあることで、根拠のある形で状況の見える化ができるようになります。最近、PDCAで回していき、改善策をデータに基づいて考えていくことができ始めてきました。従来は、「交差点では気を付けようね」という声掛けだったかもしれませんが、データと掛け合わせることで、より具体的でより効果のある対策がとれます。例えば、「なぜここに横断歩道がないんだ」「なぜガードレールがないんだ」というのも、われわれのデータで見ていくと、必ずここで急ブレーキをかけている、ここのカーブの曲がり方が変だとかいうことから見えてきます。それをもとに、この手前にミラーをつけようといったことを地方公共団体と話し合えるようになっていくはずです。

 データで安全を作り出していく。そのために、われわれが第三者的にデータとして出していくことも必要かなと思っています。

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