社会インフラにイノベーションを

 法律事務所のDXが進んで、無駄なく、品質のいいサービスが提供できるようになると、その先の社会はどうなるのだろう。

 林氏は、社会にとってより高い価値を提供したいという想いからレアラの起業に至り、会社のミッションは「社会インフラにイノベーションを起こす」こととしている。

 あらゆる企業が法の下で事業活動を行い、あらゆる個人が法の下で社会生活を送っています。そういった意味で、法は社会にとって極めて重要なインフラです。この領域がDXによって効率化を図ったり、提供するサービスの品質をさらに向上させていくことは、社会をより良くしていく上で非常に価値があると思っています。

 例えば、弁護士の時間単価が3万だとする。その当人がかけた時間はやはり依頼者に費用として返ってしまう。だからこそ、本質的な業務に時間を割けるよう効率化を図ることは大きな価値につながる。それによって、人や企業が法律関係のトラブルを予防できたり、もし起きても早期に解決できたり、そうした形で法律業界のDXは間接的に社会に大きな価値を提供できると考えているのだ。

大橋 法律というのはルールであって、ルール違反があったことに対して誰かが動かないと救済されないんですよね。罪を犯した人がいたとしても放っておいたら法律の意味がなくて、警察が動いて捜査して犯人が見つかって、最終的には裁判で罰せられるからルールの意味がある。だまされてお金を失ったときでも、それを救済する仕組みがないと、法に反する行為はあったが何も救済されていないという話になってしまう。そうした救済の仕組みをどう作っていくかが、課題かなと思っています。

 そのための手段としてはいろいろあると思います。弁護士費用は高いので保険のような仕組みでそれをカバーする。あるいは、本当に小さな紛争であればシステムを使って救済できるような仕組みを作っていく。これまでは少ない金額だから泣き寝入りでもしょうがないとなっていたところを、そうではなくて、ちゃんとお金が返ってくるような仕組みを作っていく。いろいろな形・方法が考えられると思うので、会社としてさまざまな解決方法を模索していくのが一つの方向性と思います。

 そして、社会インフラが整っていくことで、だまされた、ひどい目にあったということが多少なりとも少しずつ減らせるのではないか。そうしたことを実現していきたいという考えています。

 大橋氏は日本はまだ法律がインフラとして機能しているほうだと指摘する。裁判制度による救済すら十分に機能していない国はアジアを見てもまだまだ多い。そうした国や地域では、日本であれば救済されるような話であっても、だまされたら泣き寝入り、違法行為で被害を受けても救われない、という結果になってしまうことも少なくない。では日本と何が違うかというと、それは社会インフラの成熟度が違うから。そうした面でも、「法」という社会インフラをさらに強化して、アジアをはじめとした世界の法インフラのアップグレードも支援していけたらと大橋氏は語る。

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