法律業界のDXはなぜ必要なのか

 案件の増加であったり、売り上げアップだったり、事務所によって設定するゴールは異なるが、レアラを導入している法律事務所では弁護士の業務時間が削減でき、最終的に1人当たりの案件数が2倍以上になった例がある。また、レアラを活用することで、多拠点、他分野での展開をする法律事務所で、出稿している広告の投資対効果の分析が容易になった例もある。

 弁護士業界の動きも、この20年で大きく変わってきている。1つは市場規模の拡大。日本弁護士連合会(日弁連)に登録されている弁護士数は2020年で4万2164人。司法試験の制度が改定された2000年(1万7126人)から比べると倍以上の伸びになる※1
※1弁護士白書

 それに伴い、弁護士報酬の市場も拡大し、2000年の約6500億円に対し、2018年には8800億円の市場規模になっている。

 林氏は、案件管理の効率化をベースにこの市場のDXを進めていきたいと語る。

 マーケットを拡大していく選択肢としては、大きく分けて海外展開、企業法務部門への展開、弁護士業界への深掘りの3つがあると考えています。海外展開については、もちろん国によって法律が違う部分もありますが、やはり専門的な業界だけあって、業務の進め方やデジタル化のニーズは同じように高いので、これから法律セクターが成長/成熟していくアジア等は特に可能性があると考えています。

 次に、企業法務部門への展開については、既にオプションとして提供し始めている機能ですが、弁護士事務所が相対する顧問先の企業の法務部門側のコミュニケーションもサポートしています。法務担当が変わった際のナレッジの共有も顧問弁護士に依頼するとタイムチャージが発生するので、自分たちで過去案件の経過を組織のナレッジとして確認できるようにしています。そうした顧問先が使うアカウントまで広げていくと、先ほどのマーケット規模とは桁が変わってきます。また、業務管理以外のサービスの提供も可能性としてはありますし、隣接士業についても実際に弁護士事務所内の司法書士の方がタイムチャージの管理にLEALAをご活用いただいているケースもあります。

 もう一つ、関連することとして挙げると案件の専門化がある。弁護士全体の数が増えているということはそれだけ競争が激しくなっているということ。すると個々の弁護士もそれぞれ売り込み方を考えていくわけで、その結果、いろいろな分野の専門家が生まれていく。例えば、交通事故だったら、以前は弁護士なら誰でもできるという時代もあったが、今は後遺症や医学の知識がある人でないと難しいというように、専門性が高くなってきている。

 こうした細分化するニーズに応えるためにも、データ活用によるナレッジの共有は有効だ。なお、レアラは、現在は個々の事務所ごとのデータは閉じたものとして事務所ごとに蓄積させていく形だが、それらを統合して、より大きなデータとして活用する可能性もあり得る。大量のデータを蓄積・分析することで、例えば、ある事件分野の裁判に対し、「この手の案件であれば通常はこれくらいで進められているので、少し対応が遅いですよ」というような業務改善に向けたアラートを出すこともできる。こうした法律業務における一般的なデータを、比較対象として将来、提供することも考えていると言う。

大橋 弁護士の業務は基本的に情報を集めて資産として扱うという側面が強いので、ナレッジマネージメントという視点は特に重要だと考えています。その意味で、日常業務をしながらデジタルツールに情報がどんどん蓄積されていく点は長期的に見てとても大きな価値があると思います。よくいわれる話に、弁護士の知識やノウハウはその弁護士の頭の中だけに入っている、というものがあります。その弁護士は知っているけれども、同じ事務所にいても他の弁護士には知識やノウハウが必ずしも共有されているとは限らない。どういう事件を取り扱っているのかということ自体、あまり共有されていなかったりします。それが、一つ一つの情報がシステムに蓄積されるようになると、例えば、システムで検索することにより組織として過去の経験や情報を活用することができるようになる。そうすると、一つ一つの案件の精度があがったり、業務をより効率・迅速に対応できるようになり、それは弁護士はもちろんクライアントにとっても大きなメリットとなります。

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