ホーゲン氏はフェイスブックで誤情報対策のプロダクトマネジャーを務めていたが、21年5月に退職した。その際に数万に上る内部資料を持ち出し、米議会や米証券取引委員会(SEC)やウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアに提供した。その中には「インスタグラムが10代の女性を中心に若い利用者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす」といった内容の社内調査結果もあったとされる。

 ホーゲン氏の主張は一貫して次のようなものだ。「過激かつ社会を分裂させるようなコンテンツを優先的に表示させており、会社には問題解決を図る動機がない。なぜならサービスの利用が減ってしまうからだ」

メタ副社長「主張は誤った前提に基づいている」

 メタはホーゲン氏の主張に真っ向から反論している。同社コンテンツポリシー担当モニカ・ビカート副社長は11月7日の声明で、「当社が利用者の安全よりも利益を優先しているとの主張は誤った前提に基づいている。もちろん我々は民間企業であり利潤を追求する。だが人々の安全や健康を犠牲にして利益を出しているとの考えは、我々の商業的利益がどこにあるかという事実を誤って解釈している。我々には常に有害コンテンツを削除する商業的動機がある」(同氏)

 同氏によると、メタは21年だけでも、安全やセキュリティー対策に50億ドル(約5600億円)以上を投じた。現在ではコンテンツをチェックする担当者を4万人以上雇っているという。ヘイトスピーチ(憎悪表現)は過去3カ月間で半減し、表示件数は全体の0.05%に抑えることができているという。「削除したヘイトスピーチのうち97%は外部から報告を受ける前に削除。この比率は数年前時点で23%だった」(メタのビカート副社長)

 それでもなお、同社はSNSによって生じる問題を把握しながらいまだ解決できていないと批判されている。ウォール・ストリート・ジャーナルは11月5日、「フェイスブック利用者の1割以上に当たる3億6000万人が中毒的にサービスを利用しており、睡眠や仕事、子育て、人間関係に支障を来していることが、メタの内部文書によって分かっている」と報じた

 ホーゲン氏は11月8日、欧州議会の公聴会で「欧州の新たなSNS規制法は世界の絶対的基準になる可能性を持っている。私の国である米国も含めて他国にも影響を及ぼし、世界で民主主義を擁護するための新しいルール作りが進む」と述べた(ロイターの記事)。

 (参考・関連記事)「フェイスブック、さらに波紋広げる元社員の暴露文書 | JDIR