また、中東の砂漠地帯とは対照的に、北欧の寒冷地デンマークではノルディック・ハーベスト(Nordic Harvest)が持続可能な「垂直農法」による大規模農場を建設、巨大な室内空間で年間約1000トンの葉物野菜を生産している。季節に関係なく年間平均15回の収穫できるのがノルディック・ハーベストの強みだ。
約7000平方メートルの敷地に14段の棚が垂直に敷き詰められ、農場全てのLEDライトの電力は全て風力発電で賄われる。また、野菜の種植えや生育の管理の大半はロボットによって自動で行われるため、人件費を大幅に削減でき、その結果、有機野菜と同程度のリーズナブルな価格で販売が可能という。
BtoBビジネスとしても発展が期待される「垂直農法」
都市型農業、特に「垂直農法」については、農作物を生産するCEA企業が葉物野菜の生産・販売によって直接マネタイズする以外にも、CEAに参入する企業に最先端の「垂直農法」のテクノロジーやノウハウを提供することで、いわばBtoBのスキームで後方支援を行うビジネスモデルの発展が大いに期待できることを見落としてはならない。
民生技術の世界的なイベント「CES」においては、早くも2年前の「CES 2020」において米ユタ州に本拠を置くCEAを専門とするフードテック企業、グロブ・テクノロジーズ(Grov Technologies)が初出展を果たし、存在感をアピールしていた。同社は現在、地元ユタ州やテキサス州の企業に「垂直農法」のテクノロジーとノウハウの提供を開始している。
また、先ほど紹介したエミレーツ航空の「垂直農法」による屋内農場は米シリコンバレーのCEA専門企業、クロップワン(Crop One)の技術指導によって実現しているし、デンマークのノルディック・ハーベストも台湾のイエスヘルスグループ(YesHealth Group)が10年以上の研究の末、独自開発した「垂直農法」の技術・ノウハウを導入することで成り立っている。
CEAを専門とするフードテック企業は、あたかも“プラント輸出”を行うようなイメージで、装置産業としてのハイテク農場を提供してマネタイズを行う。興味深いことに、20世紀の“プラント輸出”は地球温暖化ガス排出の温床となったが、21世紀のそれは逆にサステナビリティを象徴するアイコンとなるに違いない。
サステナブルな都市型農業は、食糧危機の解消とカーボンフットプリントの最小化という社会的大義をまとって、フードテックの切り札となっていく。そして、今、そのダイナミックで有機的な変化が、世界の都市で、まさに現在進行形で起きつつあるのだ。