ゴッサム・グリーンズの共同創始者で最高経営責任者(CEO)のビラージ・プーリー(Viraj Puri)はフォーブス誌のインタビューで「私たちにとっては(コロナ禍は)正真正銘のチャンスだった。ゴッサム・グリーンズの短縮されたサプライチェーンが、従来のサプライチェーンの空白を埋めることになったからだ」と語っている。

(参照)「屋内農場企業ゴッサム・グリーンズ、コロナ禍で評価上昇」(フォーブス ジャパン)

 ゴッサム・グリーンズが採算のとれる「屋上農園」を建設・運営してきた実績は機関投資家からも高く評価され、コロナ禍の売上向上が強い追い風にもなって、同社は総額1億3000万ドルの資金を調達することに成功した。

 新たな資金の投入でゴッサム・グリーンズは全米各地に「屋上農園」の新設を進めているだけではなく、ホールフーズ・マーケット以外にもセーフウェイ、ターゲット、ハリス・ティーター、ショップライト、スプラウツなどのチェーンにも葉物野菜の販路を拡大している。

 またフランスでは2020年春、フランスで10カ所以上の「屋上農園」を展開するアグリポリス(Agripolis)がパリ北西部のエンターテインメント施設の屋上に世界最大15万平方フィートの巨大農園を開設したことで話題となった。この農園では30種類以上の作物が育てられ、直接パリの市民の台所やスーパー、レストランなどにデリバリーされる。

 フランスのフードマイレージ(食べ物の輸送距離)は平均1000kmと言われるが(多くの農作物はスペインやモロッコから輸入される)、アグリポリスの場合、平均1~2kmの圏内で消費されるという。

「屋上農園」がヒートアイランド現象の対策になるだけでなく、大消費地パリの中心に近いため、輸送に伴うカーボンフットプリントを最小限に抑えられることは、ゴッサム・グリーンズ同様、差別化の大きな武器となるであろう。

「垂直農法」を使ってドバイで野菜作り

 続いて「垂直農法」企業を見ていこう。

 年間降水量は100ミリ以下、夏の平均気温は摂氏40度以上。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイは農作物の栽培には不適な環境である。事実、ドバイの食卓に並ぶ野菜のフードマイレージは平均5000kmと言われている。

 そのドバイで2017年12月、ペルシア湾岸6カ国では初めてとなる「垂直農法」の農場、バディア農場(Badia Farms)が現地の実業家オマル・アル・ジュンディ(Omar Al Jundi)氏によって開設され、生産を開始した。

 以下のYouTube動画を見てほしい。バディア農場では完全に屋内の環境で、日光や土、化学薬品・殺虫剤を全く使うことなく、新鮮で栄養価の高いレタス、マイクログリーン、ベビーリーフなどを生産している。使用する水は通常の屋外の農場の10%で、しかも使用後の水はリサイクルし、徹底して有効利用しているという。

(参考)Dubai-based Badia Farms, brings high tech farming into the region(YouTube動画より)

 また、同じドバイを本拠とするエミレーツ航空は、ドバイ・アール・マクトゥーム空港のすぐ近くに4000万ドルを投資して「垂直農法」による大規模農場を建設し、都市型農業を実践するCEA企業の仲間入りを果たした。1日あたり2700kgの葉物野菜を生産し、2019年12月以降、エミレーツ航空の機内食やラウンジでの提供を開始している。