日本はこれまでの考え方に固執し過ぎていないか

 日本では新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが推奨され、公務員と多くの企業がトライをしたが、緊急事態宣言が出る回数が増えると、通勤電車が混雑するなどリモートワークを定着させられない現実がある。

 香港政府も民間企業に在宅勤務を推奨するとともに、公務員は消防、救急など緊急性を要する業務の従事者以外は全てリモートワークが実施された。

 もちろん、必要な書類の入手といった行政サービスをすぐに受けられなかったり、香港の郵便は民営化されていないので郵送・配送にも遅れが生じたりと、少々不便な面が出たが、それでも問題なく、香港社会は回った。

 これには日本と香港での労働における文化の違いもあるだろう。ある香港の民間企業で中間管理職に就く友人は「私の上司が『新規感染者も下降傾向にあるからオフィスでの仕事を再開しよう』とSNSで提案したんです。すると『在宅勤務で仕事が回っているのにオフィスに通勤する意味が分からない』『下降傾向といっても感染リスクはまだあるのに職員を危険にさらすのか?』と抗議を受けて撤回しましたね」と話していた。

 香港は年功序列という上下関係はないので、部下が上司にもしっかりと意見を言える風通しの良さがある。これからやろうとしていることが理に適っているのであれば、これまでのやり方に固執しないのが香港流。

 一方、日本はどうだろうか。仕事はオフィスでするものという伝統的な考えが従業員の健康よりも重視されていないだろうか。少なくともホワイトカラーが多く勤務する企業では平社員が「感染者が増えているから出勤は控えましょう」と上層部に言える雰囲気づくりをしてほしいと思う。

 そうした小さな変革を阻害する要因を取り除いていくことが、日本のDXを進めることにつながるように感じている。