香港では病院や医師が変わっても継続的な治療が可能

 香港でDXが進んだメリットを最も感じるのは病院かもしれない。日本の公立病院の場合、AとBの病院では患者の情報は基本的に共有されないので、もし、出張先で病院に行った場合、既往症や慢性疾患などを医師に説明しなければならない。

 香港は公立病院を管轄する医院管理局(Hospital Authority)がデータベースを構築し、公立病院間で患者の情報が共有できるシステムになっている。個人病院でも患者の同意があれば担当医はそのシステムにアクセスして過去の病歴や処方箋を見ることが可能で、公立・私立の病院が共同で診察できるのだ。つまり、病院が変わったり、担当医師が変わっても継続的な治療を受けられるのだ。

 香港の公立病院で働く日本人医師を取材したことがあるが、「過去のカルテが手元にあるのと同じなので、突然、新しい患者を診ることになっても診療しやすくなる」と話していたことを思い出す。

 また、香港には「医健通(ehealth)」という政府が提供するアプリがある。このアプリは、自分のアレルギー情報、処方された薬の情報、過去と今後の通院の記録、医者の検索、政府からの最新の医療情報の提供(回覧板代わりになる)などの機能を持つ。そして、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにワクチン接種記録の機能も追加された。