自らが変わらないと解決しない

 最近、発表されたある人的資本に関する意識調査によると、企業の経営者・役員および人事・教育担当者の7割弱が「人的資本を重要視する潮流」を認知しているという。

 数カ月前、さまざまな組織・企業の方々と人的資本に関して対話・議論をしたが、多くの方が「自組織では人的資本という認識はまだまだない」と発言していた。そうした中、7割弱の経営層・人事が「人的資本を重要視する潮流」について認知しているということは、大きな意識の変化として歓迎すべである。

 人的資本の情報開示や充実が注目されている背景には、「今、できていないが、実践すると得られることが多い」と考える企業が増えていることがある。

 今、できてないことをできるようにするには、新しいものの見方・考え方が必要なわけだが、これは裏を返せば、今、できていない人的資本の充実を邪魔しているのが、今までのものの見方・考え方・やり方であるとも言える。

 今の考え方・やり方は、経験から培ってきた物事をうまく進めるための知恵であり、かけがえのない財産である。しかし、その財産は時として、新しい考えや行動を止めるブレーキとして機能することを認識してもらいたい。

 新しいものの見方・考え方を持たないと解決しない、自らが変わらないと解決できない課題のことを「適応を要する課題」という。これと対をなすのが、外部の技術・資源を活用することで解決していく「技術的な問題」である。

 人的資本の充実を実現させるには、まず自らが変わらないと解決できない課題(適応を要する課題)を認識すべきである。組織の中で責任ある立場を担う方々から現場の第一線で活躍する方々まで、自らが変わることで人的資本を充実させていくことを期待する。

コンサルタント 笠井洋(かさい ひろし)

ラーニングコンサルティング事業ユニット
組織開発ソリューションセンター長 シニア・コンサルタント

経営戦略策定実践、新事業開発創出等の事業変革コンサルティング後、人材開発・組織開発コンサルティング20年の実践から必要性を見出したエンパワーメント理論をもとに開発した組織の変革促進手法であるチェンジマネジメントなどを活用して企業・団体の組織変革に向けた「人的資本の充実」の実践を促進する人材・組織開発支援を実践している。
・全日本能率連盟認定 マスター・マネジメント・コンサルタント
・米国コーチング協会認定 CPCC(コーチングのプロ資格)等 多数取得