アバター技術はマーケターにも開かれた存在に

 ここまでで、音声で訴え掛けるマーケティングの可能性を感じてもらえたと思う。しかし、音声は音声だけで運用するよりも、それを発生させる媒体との相乗効果が期待できる。そうアバターだ。

 アバター技術をマーケティングに適用する例はこれまでにも存在したが、大量にパターンを作成するにはコストがかかり過ぎたり、リアリティに欠けたり、技術が難解で利活用するにはハードルが高過ぎる等の理由から、デジタルマーケティングの世界ではあまり活用が進んでいなかった。

 しかし、先日、世界最大手のゲーム開発/販売企業Epic Games社が「誰でも簡単かつ短時間でリアルなアバター」を作れるサービス「MetaHuman Creator」を無償でリリースした。

 ブラウザ上で動作するこのクラウドサービスでは、複雑な操作なしでオリジナリティの高いアバターを作成できる。

 ぜひ読者の皆さまも一度触れてみてほしいのだが、このサービスは人種・性別などさまざま、かつ大量に用意されたプリセットから編集できたり、このプリセット同士を多数「ブレンド」し「目はこのAのプリセット、鼻立ちはB、頬と肌はCとDを50%掛け合わせ、髪の毛はストレートのロングに・・・」といったカスタマイズが可能だ。

 出来上がったアバターに喜怒哀楽のモーションを取らせ、プレビューすることができるのだが、驚くほど自然でリアリティがあり、そのバリエーションも本当に豊かである。

 こうしたテクノロジーにより、先ほどの音声技術同様、「顧客が好むアバターを1to1で出し分け、接客させる」といったことも実現可能だ。

(余談だが筆者はこの技術と同Epic Games社が提供する「Unreal Engine」、そしてiPhoneを使ったフェイストラッキングアプリを組み合わせ、社内のオンラインミーティングに「オリジナルのアバター」を出席させたが、非常に面白い反応だった)

 ここまでで勘の良い読者は気付いたことだろう。

 前述のリアルタイムエンゲージメント技術、ディープラーニング技術による音声合成、リアルなアバター技術、これら3つを組み合わせたときに実現し得る「優れた顧客体験」を、あなたが購買のモーメントを発したその瞬間、リアルタイムに欲しかった情報を、あなたが心地良いと感じる音声と親しみを感じるアバターが届けてくれる。

 マーケターがリアルタイム性、聴覚、人物認識としての視覚、この3つに取り組む日は近い。