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 各社がマーケティングDXに着手し、データ基盤の構築やそこに蓄積したデータの分析/示唆抽出に取り組んでいる昨今、次なる課題は「優れた顧客体験をどう創っていくか?」である。今回はそんな顧客体験を飛躍的に進化させる可能性のある3つのテクノロジーを紹介したい。

真のリアルタイムマーケティング時代の到来

 急速に進歩したデジタルマーケティングによって「Right Target = 正しい相手」に「Right Channel = 最適なチャネル」でのコミュニケーションが可能となったが、さまざまな制約によって「Right Timing = 適切なタイミング」でのコミュニケーションはまだまだ実現しているとは言い難い。そんなマーケターの悲願を叶えるテクノロジーが「リアルタイムエンゲージメントツール」だ。

 リアルタイム性は非常に重要である。求められている情報やコミュニケーションを、必要なタイミングで適切に提供することは購買確度を飛躍的に高める可能性があるからだ。

 前述のデータ基盤とそこに蓄積されたデータの分析によって購買予兆を示すモーメントの抽出技術は高まっている。

 しかしながら、読者の皆さまに一消費者として思い返していただきたい。日頃、「今まさにこの情報が欲しかった」と感嘆するデジタルコミュニケーションはどの程度あるだろうか?

 そう、現実にはまだまだリアルタイムなマーケティング体験を提供できている企業は多くない。

 これには幾つかのボトルネックが存在しているからに他ならない。
例えば、「データ基盤とコミュニケーションチャネルのデータ連携がリアルタイムで行われていないこと」や「コミュニケーションチャネル間でデータのやりとりが行われておらず、それぞれで個別最適化されていること」、他にも「コミュニケーションやマーケティング施策の結果データが戻ってくるまでに時間がかかり過ぎていること」等が挙げられる。

 こうした課題を解決するテクノロジーとして近年注目を集めているのが、Salesforce社の「Interaction Studio」や、日本にも本格上陸を果たした「Braze」などに代表されるリアルタイムエンゲージメントツールだ。こうしたリアルタイムエンゲージメントツールでは上記のようなボトルネックを解消し、1ツールでリアルタイムなコミュニケーションを実現している。

「特定のセグメントに該当するユーザーがWeb上で特定の行動を取り、さらに現実世界のライバル企業店舗に近付いた際にアプリを通じてリアルタイムでコミュニケーションを実行、その成否に基づいて続くコミュニケーションの内容を変える」といった、マーケターが一種の理想として考えるマーケティング手法を机上の空論ではなく現実のものとする。これがリアルタイムエンゲージメントツールである。

 筆者は本年、または来年には日本でもリアルタイムマーケティング元年がやってくるのではないかとにらんでいる。

 ここまで「Right Timing = 適切なタイミング」の進化について触れてきたが、続いて「Right Message = 正しいメッセージ」についてもテクノロジーによる進化の予兆を言及したい。

 この分野では近年「1to1」「パーソナライズ」と声高に叫ばれるものの、デジタルマーケティングにおける適用範囲はあくまでも広告画像やテキスト、ジャーニーといった範疇に留まっている。

 これを「聴覚と視覚(人物認識)」の領域にまで拡張する可能性を大いに秘めているのが「ディープラーニング技術を駆使した音声合成技術」と「まるで実在する人物のようにリアルなアバター作成技術」の2つのテクノロジーである。