変革に挑戦している人を全力で応援したい

――最後に、今後どうなってほしいとか、イメージする日本のDXの未来像について教えてください。

酒井 そうですね、難しい質問ですね。私はみんなに楽しく仕事をしてほしいんです。みんなというのはいろいろなみんな、です。読者の方もそうでし、この本で取り上げた人もそうです。

 取り上げた人に関しては、何かあってもこれを読み返して元気になってほしいと思っています。これからも、何かうまくいかないことが起きたり、抵抗勢力に阻まれて改革がうまくいかなくなったり、ということはきっと出てくると思います。そういうときに、「今日もうまくいかなかった」って家で酒をあおっていたら、この本が目に入って、「自分、取り上げられたことがあったな」とパラパラめくって、「自分、がんばってるな」と、そう思ってほしい。例えば、コープさっぽろの対馬慶貞さん。彼はレガシーなところで改革をしていて、今後、何かうまくいかないことに突き当たるかもしれない。そんなとき、この本の中で部下の人が対馬さんに対して語っている一行が目に入ったら、また元気になって、やる気を取り戻すんじゃないか。そんなことを考えて書いています。

コープさっぽろ本部で取材に応じてくれた田名辺健人さん、丸本健二郎さん、対馬慶貞さん、画面の中は長谷川秀樹さん

 読者の方にとっては、他のDXの記事とか書籍で日本はIT後進国だとかいわれたり、残念だなみたいに思う記事が多いと思うんですけど、そんなことないんだと伝えたい。この本を読んで、そうではないDXの取り組みがあるということを知ってほしい。「がんばれないな、自分」と思うとき、「他の人もこうがんばっているから、自分もがんばろうかな」と思ってほしい。そういうものがあれば、楽しく働けるのではないかと思っているんです。「北風と太陽」じゃないですけど、ずっとイケてないとかカッコ悪いと言われ続けていたらそうなってしまうじゃないですか。それよりは、こういういいところもあるよというふうに言ってあげた方がみんな楽しく働けるんじゃないかなと。それがこの本です。

 「変える」というのは本当にカロリーが必要なんですね。今のまま、緩く下がっていくかもしれないけど、そうじゃないと思って何かをやろうとしている人は全力で応援したい。その人のがんばりを通して、その他の日本の改革をしようと思っている人たちが勇気づけられたり、明日からがんばろうかなくらいに思ってくれたらいいなと思います。