情シスでの経験がこの本の執筆につながっていく

――酒井さんの経歴を教えてください。酒井さんがITに関わるようになったのはいつ頃からだったんですか?

酒井 もともと紙の出版社を志望して就活をしていたんですが、初任給に目がくらんでアイティメディアに入ったんです。ほぼ初めて「IT」というものに触れたのはそこです。それまでは、携帯電話は好きでよく買い替えたり、スペックとか知ってはいたんですが、それくらいなものでした。

 入社して1年目は広告営業に。でも、そのあとジョブローテーションで情シスに異動して、そこで初めてLinuxとか、一般的にITと呼ばれるような仕事に携わりました。いわゆる技術部門で、ごく小さな部屋に私より年齢の高い男性ばかりという。いきなり若い女性が入ってきても、話し掛け方も分からない、どう教えていいかも緊張しちゃうというような人たちで。最初はなかなか打ち解けられなかったんです。でも、1週間後くらいに、この部署、なんかフィギュアが多いぞって気付いて。もしかして、これが話し掛ける材料になるかもしれないと思って、アニメのフィギュアを会社に持ってきて机に置き始めたら、そういう人なんだと思ってくれたのか、周りが話し掛けてくれるようになって。いろいろなことを教えてもらいました。LinuxとかSQLのコマンドとか、分からないことがあればすぐ教えてくれる。それが本当にITとの出会いで、同時にITに携わる人の愛らしさ、恥ずかしくて話し掛けられないとか、そこに気付いて、たぶんそれが今も続いている感じです。

――なかなか珍しいジョブローテーションですよね。

酒井 たまたま前にいた人が辞めてしまったというのもあって、まだ営業部で実績があるわけでもなかったので動かしやすかったんだろうなと思います。

 情シスには3年いたんですが、ちょうどITの基盤がクラウドに移行した時期で、クラウドを使うようになって情シスの人たちの言動がすごく前向きになる様子を見ていたんです。今までオンプレでたくさん時間がかかっていて、障害対応も、物理的なサーバを相手に自分たちで作業をしないといけない。それがクラウドにすることで、ある意味、手離れがよくなって、もっと本質的な課題解決に当たれる。頭で考える、戦略を考えるというところにもっと時間をかけられるようになった。その様子を、変化を目の当たりにして、単純にすごいなって思ったんです。ITはこういうふうに、人をも変えてしまうんだなと。そういう意味で、ITに信頼を置いているというのはありますね。

『涼宮ハルヒシリーズ』が好きな上司からのお下がりも含め、最終的にはこうなった