その施設とは、カリフォルニア州カルバーシティーにある「カルバースタジオ」。サイレント映画の名監督トーマス・H・インスによって作られたスタジオで、「風と共に去りぬ」や「市民ケーン」などの作品もここで撮影された。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、カルバースタジオの面積は5万7000平方メートル(東京ドーム1.2個分)で、アマゾンはその大部分を占有している。

 一方、ネットフリックスはこの地域で複数の撮影スタジオを利用するほか、ニューメキシコ州アルバカーキに自前のスタジオを持つ。

 こうした中、アップルのエンタメ分野における野望が膨らんでいるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。同社は、巨匠マーティン・スコセッシ監督の新作映画に資金を拠出している。作品は、米人気俳優のレオナルド・ディカプリオ氏とロバート・デ・ニーロ氏が共演する「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」で、現在オクラホマ州で撮影中だ。

 当初、米メディア大手バイアコムCBS傘下の映画大手パラマウント・ピクチャーズが資金提供する予定だった。だが、予算が2億ドル(約220億円)以上に膨らみ、パラマウントは制作と資金の両面で問題を抱えていた。

 21年2月には話題作「CODA」の世界配給権をアップルがサンダンス映画祭史上の最高額2500万ドル(約27億5000万円)で獲得したとも報じられた。

3強に挑むメディア大手

 だが、動画配信市場は、ネットフリックス、米ウォルト・ディズニー、アマゾンが先行している。

 ネットフリックスは21年7月20日の決算発表で有料会員数が2億918万人になったと明らかにした。ディズニーが19年11月に本格サービスを開始した「Disney+」の会員数は約1年半で1億360万人に達した。アマゾンのプライム会員数は2億人超で、20年にプライムビデオを視聴した人は約1億7500万人に上ったとされる。

 動画配信は巣ごもり消費の拡大で急成長した。米国では近年「コードカッター」と呼ばれる、ケーブルテレビ契約をやめる人が急増しており、既存メディアもダイレクト・トゥ・コンシューマーズと呼ばれる動画配信に注力し、3強に対抗している。

 例えば、ワーナーメディアは映画制作・配給などのワーナー・ブラザースやケーブルテレビ・衛星放送のニュースチャンネル「CNN」、ドラマチャンネル「HBO」を傘下に持ち、このうちHBOが動画配信「HBOマックス」を展開。ワーナーメディアと経営統合する予定のディスカバリーは動画配信「ディスカバリー+」を手がけている。

 米ケーブルテレビ大手コムキャストの傘下には、映画大手ユニバーサル・ピクチャーズを持つNBCユニバーサルがあり、こちらは「ピーコック」と呼ぶ動画配信を提供している。

 バイアコムCBSは、地上波のCBSのほか、ケーブルテレビの音楽専門チャンネル「MTV」やパラマウント・ピクチャーズなどを傘下に持ち、動画配信「パラマウント+」を手がけている。