しかし、GAFAなどのテクノロジー大手はサービスを無料・安価で提供しており、この枠組みで規制することが困難。そこでカーン氏は反トラスト法の執行範囲を広げるべきだと提唱している。例えば、自社プラットフォーム上で中小企業と競合するアマゾンの商慣行や、原価割れ販売で他の企業を市場から排除する「略奪的価格設定」に注目する必要があるとしている。

 アマゾンはこうしたカーン氏の主張について、法改正の手続きを踏まず現行の枠組みを変更しようとしていると批判しているようだ。

 嘆願書では、「カーン氏は恐らく持論を変えることはないだろう。もしそうするのなら、彼女のキャリア形成の基盤となっている、過去何年もの著作や発言を自ら否定することになる。彼女がFTCの委員長に就任した今、懸念はさらに高まった」とも述べた。

 米メディアによると、まれなことではあるが、これまでも過去のキャリアや著作、明白な主張を理由に、企業や団体がFTC委員長や同委員の除外を求め、認められた事例があるという。

現行の枠組みではGAFA規制困難

 FTCと米ニューヨーク州などの48州・地域の司法長官は20年12月、フェイスブックを反トラスト法違反の疑いで提訴した。フェイスブックが米国のSNS市場で6割以上のシェアを持っており独占に当たると主張。12年に買収した写真共有アプリ「インスタグラム」と14年買収した対話アプリ「ワッツアップ」を分離するよう求めた。

 しかし、米首都ワシントンの連邦地裁は21年6月28日、「(フェイスブックが)SNS市場を独占していることを示す法的根拠が不十分だ」としてFTCの訴状を棄却。州・地域の司法長官による訴訟は、訴えそのものを棄却した。FTCは30日以内に内容を修正して訴状を再提出することができる。

 だが、従来型のモノの販売競争を念頭に、価格つり上げなどの消費者不利益を重視する反トラスト法の枠組みでは、GAFAを規制することは困難だと指摘されている。

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