イングランド銀行のデジタルマネー報告書

 2021年6月7日、英国の中央銀行であるイングランド銀行は、「新しい形のデジタルマネー」(New Forms of Digital Money)という討議用ペーパーを公表しました。

 このペーパーの特徴は、「中央銀行の発行するデジタル通貨」(中央銀行デジタル通貨)と、「民間の発行するデジタル通貨」(汎用性のあるステーブルコイン)の両方を「新しい形のデジタルマネー」と捉えていることです。

 これまで、ビットコインのような、誰の債務でもなく裏付け資産も持たない暗号資産について、各国当局は「ボラティリティが大き過ぎ、支払決済手段としては広まらないだろう」として、主に「投機的な投資の対象」と捉えてきました。この見方は概ね正しかったと言えます。

 一方、裏付け資産を持つステーブルコインについては、ボラティリティの問題を克服できる可能性があることから、各国で関心が高まっています。今回公表された英国の討議用ペーパーでは、中央銀行デジタル通貨とステーブルコインの両方を含む「新しい形のデジタルマネー」について、その利用拡大を現実の可能性として捉えています。具体的には、これらが発行されれば、個人や企業の銀行預金の5分の1程度が「新しい形のデジタルマネー」に置き換わるケースが想定されています。

預金の5分の1程度が「新しい形のデジタルマネー」に置き換わる想定[注:HQLAとは、信用度の高い流動資産(High Quality Liquid Assets)のこと。]

 預金は銀行貸出の原資になっていますので、預金の流出は貸出にも当然影響が及びます。また、銀行が貸出を維持するために、銀行が預金の減少分を市場での債券発行などで補おうとすれば、銀行にとってコスト上昇要因になります。これは、貸出金利の上昇につながるかもしれません。これらの複雑な論点について、銀行や民間企業、学界などさまざまな人々からの意見を得たいというのが、イングランド銀行が今回のペーパーを公表した背景です。